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2012. 02. 11 - 12
 乾徳山、西沢渓谷


東京での仕事の後の恒例の山行だが、冬でもあるので一泊程度の低山を計画。中央線沿線の高柄山、倉岳山、九鬼山、高川山の縦走を考えた。しかし。どうも心が躍らないので、別の案を練っていたところ、以前から行きたいと思っていた乾徳山は冬でもバスが通じていることが分かった。2000mを超えるのである程度の雪も期待できるが、今年の全国的な大雪も日本海側だけなので問題にはならない。テントを持ち込むほどの山ではないが、ピストンではもったいないので、気分のよさそうな国師ヶ原で一泊することにした。しかし、それでは時間があまりすぎると思っていると、山梨市駅からのバスは、乾徳山登山口を経由して西沢渓谷まで行くことが分かった。2日目の後半は西沢渓谷ということにすればベストの計画になる。雁峠から下りてきて、西沢渓谷に行くことを考えたことがあったが、氷雨のなかで道の駅あたりにテントを張るのも気が滅入ったし、なにより転落事故のため入山禁止になっているというので取りやめたことがある。その時期ではまだ氷結は期待できなかったので、今回の方がはるかによさそう。大変心の躍る計画となった。

同行: 単独

2012. 02. 11 徳和から乾徳山に登り、国師ヶ原まで

コースタイム

0945 乾徳山登山口BS、1000 登山口、1130-35 錦晶水、1144 国師ヶ原、1150-1222 高原ヒュッテ、1252 月見岩、1257 扇平、1333 髭剃岩、1408-48 乾徳山(2031)、1453 水のタル(タワ?)、1538-48 アイゼンをはずす、1618 高原ヒュッテ 


中央線の中からもすばらしい展望が得られ、この日の好天は保証されたような感じだ。高尾で乗り換えたときには大勢いたハイカーも駅に着くたびに下りていき、山梨市駅から乗り込んだのは乾徳山を往復するという若い人が1人と西沢渓谷まで乗り続けた2-3人だけ。人気の山でもあり、好天の土曜なのでもう少し登るのかと思っていた。バスを降りてすぐに歩き始める。帰りのバスが間に合うかどうかと大変心配していた若者はかなりしてから追いついて来て、先を急いで登っていった。林道を越えると銀晶水らしいが気がつかないまま通り過ぎ、錦晶水が現れるまで少し心配になる。積雪量もそれほど多くないので、雪から作るのも気が進まない。やがてそれらしい所にでたが、凍っていて水は見あたらない。少し見回すと、流れている部分もみつかり安心する。さらに上にはパイプから流れ落ちている水場があった。1.5Lだけ汲んだが、結果的にはピッタリ程度で、それほどの余裕はなかった。そこから10分ほどで国師ヶ原の十字路に出る。まずは高原ヒュッテに行き、荷物をデポする。ついでに湯を沸かしてスープを作り、駅で買ったパンで昼食をとる。




国師ヶ原の高原ヒュッテ


軽くなった荷物をサブザックに入れ、なだらかに登っていく。やがて南側の視界が一気に広がり、三つ峠、御坂山塊の先に富士山の頂上部分が見え、天子山塊、南アと続く。さらに登り、月見岩をすぎると乾徳山の山頂付近の高まりが目に入る。カヤトの広がる扇平一帯。地理院地形図と昭文社の地図がずれているので紛らわしいが、道満尾根への分岐点だ。ここで初めて奥秩父が現れる。破風山、雁坂嶺、水晶山、笠取山、唐松尾山、竜喰山、飛龍山などが目に入る。多分雲取も。




扇平から牛首、破風山、雁坂嶺(左から)



だんだん雪と岩が増え始める。髭剃岩はすっぱりと切れたユニークな岩で、弁慶が切ったとかいう伝説でもできそうな形をしている。さらに広がる展望台からは下界の町がはっきりと識別できるようになり、かわいらしい塩山の塩の山も判別できる。そろそろ頂上が近づいたかなと想像したときに、現地点は16/20という標識がでてきて意外に思う。20がどういう意味なのかの説明がないので理解できず、まだ8合目なのかと意外だった。すぐに頂上直下の有名な岩場になったので、自分の想像の方が正しかった。スタンスのないスラブ上の一枚岩で、2度ほどは両手で鎖をつかんで腕力で登らざるを得ない所があった。それが終わると頂上に飛び出す。




頂上直下の鎖場




乾徳山頂上から北奥千丈岳、国師岳、黒金山


文字通り360°の遮ることのない展望が広がっていた(詳細は別ページ)。天子山塊方面の透明度が悪い程度であとは木曽駒まで見えている。一点にとどまってぐるりとパノラマ写真を撮ることができる山頂は、ほとんどないのではないだろうか。風も強くない日だまりのなかで、40分ほどもとどまって楽しむ。いつも白峰三山の主役は間の岳と思うのだが、このあたりからはその印象がとくに強い。北岳特有のすっきりとした鋭峰があるときはそれなりの魅力があるが、ここからはズングリとした姿で、両翼をすっきりと伸ばした間の岳の脇役でしかない。飛龍と大菩薩の間に御前山と三頭山が遠くに見えている。奥秩父の名山である金峰山、国師岳、笠取山、雲取山の頂上を見つけるのはやや難しいものがある。

来た道を帰るのも魅力があったが、もう十分に展望も楽しんだので、知らない道である水のタワ経由で帰ることにする。北斜面なので念のためアイゼンを着ける。この予想は外れで、北斜面は雪が深く、むしろなくても済んだ。そこからUターンしてからはほとんどが南を向いているのだが、むしろそちらでアイゼンが役に立った。かなり下まで履いたまま。気を使うことなく歩くことができるので、ありがたい。道そのものは単調なものでカメラを出すこともなかった。国師ヶ原に近づいてやっと晴れやかな気分になる。小屋の手前のが白樺の点在する広々とした原。

ヒュッテに着くと、二人連れの人が小屋の中央にテントを張っていて酒を飲み始めていた。板の上で調理をするのは、コンロが安定するので本当に楽だ。いつもの寄せ鍋で日本酒を飲み、終わるとうどんを煮込んで腹を膨らませる。この献立もそろそろ飽きてきた気がする。−5℃程度なので、女峰や明神平よりまし。天気が安定していそうだったのでラジオも持ってこなかった。早めに寝るが、お隣がいつまでもかなりの声でしゃべり続けていた。


2012. 02. 12 道満山を経て徳和まで。その後西沢渓谷

コースタイム

0726 高原ヒュッテ、0807 大平高原の林道、0818 道満山(1314b)、0900-44 徳和BS(路線バスに乗車)、1010-35 道の駅みとみ、1046 ゲート、1049 小沢の岩陰に荷物をデポ、1103 甲武信登山口、1108-11 西沢山荘・徳ちゃん新道入口・田部重治文学碑、1118 二俣吊り橋、1130-46 大久保の滝(階段の上でアイゼン)、1208-12 竜神の滝、1232 母胎淵、1253-1307 七ツ釜五段の滝、1355 二俣、1402 東沢の危うい徒渉を避けて引き返す、1407-12 二俣で脱アイゼン、1444-1510 西沢渓谷入口BS、1608-20 山梨市駅

翌朝は目覚ましの前に05:20起床。小屋内は−10℃まで下がっていた。前夜の残りに餅と具を加えて朝食。暖まる。お隣が目を覚ます前に出発。道満尾根を目指して緩やかな登りを歩くこと10分ほどで峠になり、富士山がすっきりとした姿で目に飛び込んでくる。前日はどこかが必ず雲に隠れていたので、初めての全貌だ。関東の富士見百景の一つ、「三富からの富士」らしい。最近なんでも百@@だ。大平高原下釜口への道をわけ、大平高原から延びている林道をかすめる。あとは緩やかな道を道満山まで辿る。小さな標識と三角点があった。その後は少し急な道もあるが、早くから徳和の集落が見えるようになり、コースタイムより早く下山してしまう。1761年に建設された旧阪本家の説明を読んだり、休憩所で水をボトルに汲み、バス停の休憩所でコーヒーを淹れる。荷物も整理して、大きなザックと渓谷に持って行くサブザックに仕分けを済ませる。家に電話をして、前半終了を連絡しておく。

来たときと同じ時刻のバスに乗り込み西沢渓谷に向かう。バスの中から破風山、木賊山がクッキリと見えた。次回来るときのために、停留所のない白沢橋でも下車できることを運転手に確認しておく。終点の一つ手前の道の駅で降りて食事。ご飯ものはまだできず、麺類だけ。ついでに土産物も買っておく。ここからは正面に木賊山が立派に見える。ザックとサブザックの両方を担いで渓谷に向かう。不動小屋の女主人が「大きな荷物を持っているが甲武信か」と声をかけてきた。「渓谷だけ」、「アイゼンは持っている?」、「もちろん、大きなザックを置いておく所はないか」、「西沢山荘の裏あたりかな」などとやりとりをする。実際にはゲートをすぎてすぐの小沢との出合に、格好の大きな岩があったので、そこにデポする。西沢山荘まで持って行くのとは大違いの最適地だった。

西沢山荘のそばの田部重治の文学碑には「見よ!笛吹川の渓谷は狭り合って見上ぐるかぎり上流の方へ峭壁をなし、その間に湛へる流れの紺藍の色は、汲めども盡きぬ深い色をもって上へ上へと続いている。流れはいつまでかくの如き峭壁にさしはさまれてゐるのだらうか。」と刻まれていたが、まさにその通りの景観が待っていた。


二俣でいよいよ西沢に入っていく。大久保の滝がまずあらわれる。氷結しているが、姿そのものはとりとめがない。その後階段を上っていくようになっているので、その上でアイゼンを着ける。三重の滝には展望台がこしらえてあり、脇に入るようになっている。その割には規模が小さいように見える。写真でみる無雪期の滝の方がはるかによい。一番下の滝は雪に埋もれてないも同然なのだ。そのあたりから、渓谷美は最高潮になる。氷、雪、水が様々な形、色、表情で光のなかに戯れている。日が射していなければかなり違った印象になったことだろう。周りの岸壁、あるいは河原の岩もそれらによって彩られている。なんという豊かさ。ラスキンが水のすばらしさについて述べたエッセイを思い出す。



氷、雪、水のいろいろな表情



竜神の滝のところは一段とよい。それこそ紺藍の色の滝壺に流れ落ちる小さな二つの滝の後には豪快な氷壁が上へと伸びている。これは滝の本体でなく、単に岸壁が氷で覆われているのだが、両方が相まってすばらしい景観となっている。引き続いてすぐにあらわれるのが恋糸の滝。これも夏の写真では糸を引くようなか細いものだが、今は違う。壁全体が氷で覆われて、あたかも3本の幅広い滝が流れているようだ。次の貞泉の滝も、高さは低いものの、滝壺の色の深さで豊かな表情をしている。河原に下りられるところもあり、間近に滝の表情を見るのも楽しい。単に雪や氷があるだけでなく、条件によってはしぶきが凍り付いたところが、水晶の結晶を繋ぎ合わせたような塊になっているようなものが滝のような形をしているものもある。遊歩道の横にはパイプオルガンのようなつららがずらりと並んだりしている。太いものは直径10cmほどもある。母胎淵の深緑色は引き込まれるような感じ。案内板に甌穴とあったが、少し違うのではないだろうか。前に森吉山の桃洞沢で見たものは完全に円形の穴が開いていたが、ここのは岸壁が大きくえぐり取られて半円状になっているもので、規模も大きい。やがて方丈橋を越え、少し登るとクライマックスの七ツ釜五段の滝に到達する。終点の橋の両側がロープで遮られ、それ以上は立ち入り禁止になっている。なんら危険を冒すわけでもないので、問題ないと勝手に判断し、ロープをくぐって橋の中央まで行ってみた。全く遮るものがなく、ロープの手前で見るのと大違いでなかなかすばらしい姿を見せてくれた。もっと温度が下がると水流が隠れてしまうほどらしいが、この日はそれほどではない。下半分が見えただけで、その上を見るもはもう少し違反する必要がある。滝を見ながらクッキーと紅茶で一休みする。





竜神の滝





恋糸の滝




貞泉の滝




七ツ釜・五段の滝

帰りは早い。あっという間に二俣に戻る。最終一本前のバスに十分間に合う。しかし、東沢のことも調べていたので、そちらにも引っ張られる。最終バスになっても、新大阪着が21:30になるか22:30になるかの違いだけなので、決して危ないことはしないと心に決めて「登山禁止」の看板の横を通り抜けて入っていく。かなりのベテランの人のネット情報から、魚止の滝あたりまでなら問題ないかと、河原に下りて歩く。その人の記録では、「川はほとんど分厚い氷に覆われているので徒渉が楽」とあったが、この日はそうではなく流れがかなり見えている。最初の徒渉点ははっきりと分かったが、完全な氷の橋ではなく、いつ崩れるか分からないし、滑っただけでも水浸しになることは目に見えているので、そこで引き返すことにする。




東沢の河原


東沢も覗けて一応の満足もできたし、一つ前のバスに十分間にあう時間で引き返せたのでよかった。二俣吊り橋のところまで戻ってアイゼンをはずす。林道の歩行も朝よりは楽になっていた。ザックも無事岩陰で待っていてくれた。バス停まで戻り不動小屋で缶ビールを飲む。朝の女主人と話をしながらバスを待つ。かなり山も歩くそうで、色々とよく知っておられた。


バスの途中から前日の乾徳で帰りのバスの時間を気にしていた若者が乗り込んできた。てっきり乗り遅れてどこかで一泊したものと思ったが、十分に間に合って温泉に泊まっていたという。バス代が山梨市=乾徳間が400円、乾徳=西沢間が300円だったのに、西沢=山梨市間が900円と不可解。帰宅後に調べてみると、これは12kmまでの初乗り料金が200円と格安なためと分かった。山梨市駅から西沢渓谷まで、2回途中下車をして乗り継ぐと900円のところを600円で乗ることができるという面白い仕組みだ。



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