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2007. 10. 14-15 森吉山
 


秋田での仕事のあと、森吉に行くことを計画する。久しぶりに仙台のK氏が同行してくれることになった。花の季節か、雪の季節にと考えていた山であるが、紅葉の季節も悪くないだろうと考え直す。すばらしい沢が多いらしいので、その一つの桃洞沢を歩くことをまずは第一目標とした。K氏が車を出してくれることになったので、計画を作り直す。


同行:K氏

2007.10.14 桃洞沢、割沢森

コースタイ

730 森吉山荘、800-810 野生鳥獣センター、823 黒石コース分岐、846 二度目の黒石分岐、850 赤水沢との合流点、856 横滝、910-917 桃洞滝、935-939 左岸から八段の滝、1003 中の滝、1013-1016 男滝、1026 二俣を右へ、1112-1115 二俣を右へ、1120 二俣を右へ、1125 二俣を左へ、1127-1134 奥森吉・奥阿仁縦走路に出る、1138 東側の小ピーク、1141 コルから西北西へ、1200-1203 大森分岐、1209 桃洞沢右の沢へ下る道、1215-1254 高場森(900)、1323 割沢森分岐、1343-1348 割沢森展望所(1001)、1410 黒沢分岐、1425 林道、1555 桃洞滝への分岐、1610-1643 野生鳥獣センター

森吉山にも登りたいが、天候の安定しているうちに、美しい滝と沢と絶賛されているコースをまず歩こうと桃洞沢を目指す。滝から上は、装備、経験者、読図力が必要と紹介されているが、試しに行けるところまで行こうと出かける。久しぶりに2人なので、気が軽い。センターに車をおき、歩き始める。紅葉には1週間早かったらしく、緑が多い。立川沿いの気持ちのよい林の道である。キノコ採りのおばさんがいたので、なにを採っているのかと聞くと、ブナカノコだと笑っている。赤水沢と合流する地点で桃洞沢の方に進む。赤水沢にも兎滝という見どころもあるそうなので、もし桃洞滝で引き返してくるなら、そちらにも行ってから、森吉山に登ろうと計画していた。すぐに横滝があらわれる。川巾は20mほどであろうか、そこに高さ4mほどの一枚岩が同じ高さで広がっており、そこを滑り台のように水が流れ落ちている。このような形の滝はそうあるものではない。その後は川の中を歩くようになる。地下足袋とわらじを持ってきたが、水に浸かりきりではかなり冷たそうなので、行けるところまで登山靴で行くことにする。

目玉の桃洞滝があらわれる。落ち口は狭いが、そのあと3本の流れに分かれ、最後はまた狭い滝口に集まっている。その膨らみがかなり巾広いので、桃の形に見える。滝の名前の由来であろう。紅葉は最盛期とは言えないが、滝の上は赤、黄、緑に彩られ、白い岩との対比が美しい。あちこちのホームページにあったように、左岸にステップが切ってあり、簡単に登れる。






桃洞滝



その後の川床も岩盤であり、砂の上を歩くことはほとんどなかった。岩盤に甌穴といわれる数mの直径の穴があちこちにあるのも珍しい。流れてきた岩で削られたというが、どうも理解しにくい。かなりの頻度で靴を流れの中に入れないといけないが、すぐに中まで濡れるということはなかった。滝がないところでは、流れが鏡のようになっており、岸の紅葉を映して、静かそのものであった。小さな滝がいくつも続くが、いずれもたやすく乗り越えられる。右岸から八段の滝が流れ込む辺りでは、稜線に天然記念物の桃洞杉がちらほらと立っているのが見える。中の滝で先行していたK氏がスリップしたが、それを知らないで登り、同じ所でスリップして、同じ所(足と肘)をを手ひどく打った。肘の怪我はたいしたことなかったが、足はかなり後まで痛みが残った。ズボンの右ポケットに入れていたデジカメの部分を岩に打ちつけ、カメラが太ももを強打したのである。カメラに異常がなかったのは幸運だった。

次の男滝は8mほどの高さ、20mほどの巾の一枚岩でできている。左岸にトラロープが垂れ下がっているが、ややすり減った所もあり、できるだけ力をかけないで登る。登ったあと滝の上を横に歩くが、そこは水の流路になっているという面白い形状。その後は徐々に川巾が狭くなっていくが、やはりなめの連続で、紅葉が映り、沢の魅力を最大限に見せてくれる。甌穴の数が多くなったような感じである。





赤く染まる


ナメに点在する甌


男滝


狭まっていく谷




やがて4つの二俣があらわれるが、3度は右沢、最後の小さな二俣だけは左沢へ入る。二分する度に、当然であるが沢巾が狭くなる。なんとなく、藪漕ぎはなしで稜線に出るのではないかと想像していたが、図星だった。水流がなくなって1分後に奥森吉・奥阿仁縦走路に飛び出した。実に愉快な沢登りであった。これがこの一帯のごく一部であることを考えると、あと数日いても全然退屈しなかったであろう。5万の地形図しかなかったので、どこに出たのかが分からなかった。高場森と割沢森の中間かと思ったので、東南東にある高みが高場森かもしれないと考えた。数分登るとピークになり、なんの標識もなかったので、引き返す。コルから反対方向に登ると有名な桃洞杉が見られる。通常の秋田杉とは違い、900mを超える豪雪地帯に分布する耐寒耐雪性品種らしい。樹齢200-300年。高場森の手前で、この日唯一の登山者と出会う。この辺りをかなり知っているようだが、「安の滝への道を探しているが、知らないか」と聞かれるが、勿論分からない。縦走路に出てから、正味34分後に高場森に着く。この時間から考えると、沢を登り詰めた地点はかなり南東側だったのであろう。高場森では北側の展望もあったので、昼食にする。柴倉山、焼山などが見えているようである。ここにも桃洞杉が聳えている。

行く手のコースタイムを計算すると、森吉山はおろか、ヒバクラ岳に行くことも論外であり、割沢森の手前から下り、黒石川林道を横切って野生鳥獣センターに戻る最短コースを選ぶことに決める。黒石川林道への分岐まで来たとき、時間もありそうなので割沢森まで足を伸ばしてみる。ほぼ頂上かと思うところを少し過ぎると割沢森展望所の標識があり、北から北東に小繋森から五ノ宮嶽あたりの展望がある。帰りながら最高地点を目で追う。山道から少しだけ入ったところにピークがあることは疑いがない。1人なら、わざわざ立ち寄って探っていたかもしれないが、今回は立ち止まらなかった。





桃洞杉





割沢森から小繋森方面




三差路からあとは下るだけ。といっても、20分ほど歩いてもほとんど標高が下がっていない。この山の懐の深さを知った気がした。ツマトリソウやツクバネソウの実が沢山ある。途中で樹齢400年というミズナラの大木があった。コースタイムよりかなり遅くセンターについた。どうみても森吉山一帯の案内にあるコースタイムは早すぎる。マタギの歩く速度を元にしているのではないかと2人で冗談を言う。センターでは、花や実の名前を確認するため、係の人とゆっくりと話をした。ホオの木の実を見ていたが、名前が分からなかった。ここで初めて教えられた。

そこから次の宿のある阿仁マタギへ車で向かったが、国道から入る道が分からず、二度同じ所をうろうろした。打当と書いた標識が早く出過ぎていたように思う。角館から来たときにはすぐ分かったのに。





2007.10.15 森吉山

コースタイ

647 マタギの里、650-658 打当内登山口、727 中村登山口との合流点、913 P1056、1030-1105 森吉山(1454)、1145-1152 滝、1213-1219 ブナカノコ採集、1305-1310 ミズのムカゴ採集、1333 中村口への分岐、1340 林道、1400-1430 登山口

前日、森吉山に登れなかったので、安の滝、幸兵衛滝という魅力ある散歩道がある打当であるが、この日は登山することにした。天気も悪くない。1台だけおける道路際に車をとめ、歩き始める。やがて日が射しはじめる。頼りない道であるが、そのうちしっかりとしてくる。途中で林道に出会い、ここまで車で入れたねと話す。1時間ほどは杉の植林のなかであるが、その後はブナ、ミズナラ、カンバの一種、ナラ、ホオ、オオカメノキ、モミジなどの林となる。ミズのムカゴがあったので、少し採集する。ヒバクラの続きの小池ヶ原であろうか、なだらかな峰が東の方に見える。





打当コースから見た小池ヶ原の稜線




カラマツが少し固まっている。マイヅルソウの実、フキ、オヤマボクチ(?)、枯れたショウマも。2時間近くたってやっと森吉山らしきものが見える。かなり先である。チゴユリの葉、ユキザサの実、ツバメオモトの実、カタバミの葉。周りが少し色づき初め、変化がでる。P1056から展望が開け、見えていたのは間違いなく小池ヶ原(1281m)であると確信できた。ヒバクラは陰になっている。黒い岩を流れ落ちる滝があり、飲んでみるとなかなかの美味であった。やがて、高山植物の気配。チシマアザミのような枯れた花、ヒヨドリバナ、オヤマリンドウ、ツバメオモトが多い。登り始めて3時間で、かなり先に頂上方面が見える。コースタイムは3時間というのに! やがて東側が完全に開けて、岩手山や畚岳を中心に、八幡平や秋田駒が雲に隠れてはいるが、一応指呼できる。そこから15分で頂上に達する。

大勢の人がいる。今回の登山では、登山道では誰にも会わなかったが、頂上では数十人の人と会ったことになる。ここまでTシャツ1枚だったが、歩くのをやめると同時に急に寒くなった。風が強い。太平山、小繋森、太平湖、五ノ宮嶽、皮投岳、八幡平、畚岳、岩手山、秋田駒、田沢湖、和賀岳方面などをザッと眺めたあと、人混みから離れた岩の上で食事をする。風が強く、上に長袖シャツを着るが、それでも寒いくらいである。食事を終えると、少し静かになっていたので、もう1度頂上に行くが、やはり風がきついので、ゆっくりと地図を広げる気にならず、少し欲求不満のまま下山する。





モッコ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳などが辛うじて



滝の所で長袖シャツを脱ぎ、口を潤す。登りの時に目をつけていたブナカノコを小袋一杯まで採る。ミズのムカゴももう少し採り、平泉のクリと合わせて最高の土産ができたと喜ぶ。下山の時間もコースタイムが2時間半なのに、3時間近くかかった。キノコ採りなどで20分近くの無駄があったとは言え、少しきついタイム設定である。登山口近くの民家の人が出ていたので、ブナカノコであることを確認し、料理法も教えてもらう。仙台まで運転しなければならないK氏に少し休んでもらい、角館まで運転を代行する。エアーポートタクシーの時間まで30分の余裕をもって、角館駅に到着できた。



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