2012. 08. 03 - 05 鳥海山
秋田への出張後に久しぶりの鳥海へ。もともとは飯豊の石転び雪渓からカイラギ山へ登るテント山行を予定していたが、北アルプスにも行ったので、大きい計画が重なるのは色々と問題になりそうだったので、小屋泊まりしかできない鳥海に変更した。頂上だけなら1泊で十分だが、もったいないので2泊してあちこちを回るという優雅なプランにした。
同行: 単独
2012. 08. 03 鉾立から御浜小屋へ。鳥海湖周遊。 |
コースタイム
0820 酒田庄交BT、0930-1000 鉾立BS、1010 展望台、1105-35 水場、1149 吹浦コースへ、1204 吹浦コースと合流、1237-57
御浜小屋、1307-1407 水場、1427 二の滝コース分岐、1435-45 日陰で休憩、1517 八丁坂、1527-39 扇子森(1759b)、1550
御浜小屋
急ぐことはないので、ビジターセンターで写真を見たり、質問をしたりしたが、あまり的確な回答が得られなかった。奈曽渓谷を見下ろし、稲倉岳を見上げながら、そして色々と出てくる花々に目をとめながら、暑い中を登っていく。一時間ほどすると具合のよいことに残雪から冷たい水が流れ出している所に出る。もちろん水流のそばに陣取って中食休憩とする。何度もタオルを湿らせて頭に乗せて冷やす。家で熱中症対策にやっているのと同じ。そこから少し登ると分岐点があり、吹浦口へ乗り移ることができる道がある。ビジターセンターで推奨されたので、そちらに向かう。確かに気分のよい道だった。吹浦口に合流してすぐに、鳥海湖への道が出てくる。そして、チョウカイアザミを沢山見るようになる。特に好ましい花という訳ではないが、ここしかないというので、命の神秘を見る思いがする。
奈曽渓谷と鳥海山
雪渓から流れ出す清流
鳥海の固有種1(チョウカイアザミ) |
鳥海の固有種2(チョウカイフスマ) |
愛宕坂を登っていくと御浜神社の鳥居が見えてくる。神社というよりは山小屋の方がメインであるようだ。多くの荷物を取り出して部屋に置かせて貰う。身軽になり、鳥海湖の方へ降りていく。小屋には水はなく、500ccのペットボトルを500円で買わねばならないが、鳥海湖のそばには2本の雪渓が見え、水があることは間違いないので、そこでのコーヒータイムが楽しみだ。よい水が流れていたが、肝心のコーヒーを置いてきてしまった。羊羹があったので、それを熱い湯に溶かした汁粉を作る。二の滝口を下って千畳ガ原あたりまで散策しようと考えていたが、鳥海湖の南縁から見下ろすとかなり下に見え、わざわざ降りて登り返すのも馬鹿らしくなり、取りやめる。分岐から東北に登り御田ガ原(おだがはら)に出ることにする。途中で木道を敷き詰めるための作業をしていた。ヘリコプターから降ろしたこれから使う資材が登山道にあちこちに置いてある。そのうちの一つに座ってまったりとする。
御浜小屋から見た鳥海湖
稜線に着くとそこは一面の花畑だった。ミヤマシシウドとハクサンシャジンという渋い配色が絶妙だ。北アルプスの花も種類は多かったが、一面に敷き詰められているという箇所がほとんどなかった。ここではこれがずっと御田ガ原という標識のあるピーク(地形図での扇子森のことではないだろうか?)まで続いている。そのピークが最後で、鳥海湖も望める雰囲気のよい所なので、頂上から降りてきた人の多くも一休みしている。
ミヤマシシウドとハクサンシャジンの群落
小屋に戻り、一応寝場所を確保したのち、鳥海湖を見下ろす小屋の裏側に座って、コーヒー、ソーセージエッグをつまみに日本酒、うどんを入れた鍋物の夕食まで済ませてしまう。ガスが動き、頂上がチラチラ見え始め、そのうち全体が現れる。詳しい地図を持ってこなかったので、どうも位置関係がはっきりしない。帰ってからの宿題となる。日射しがなくなると急に冷え込んできた。そのあと、もう一度雪渓まで水汲みに行っておく。これで翌日分も十分だ。
御浜小屋から頂上(右側は外輪山)
2012. 08. 04 鳥海山、河原宿、千畳ガ原を経由して御浜小屋へ |
コースタイム
0520 御浜小屋、0535 扇子森、0544 八丁坂のコル、0607 七五三掛(しめかけ)、0613 分岐を尾根コースへ、0650-55 文殊岳(2005b)、0727
伏拝岳(ふしおがみだけ)、0744-0804 行者岳(2159b)、0820百宅口(ももやけくち)コース分岐、0827-31 七高山(2229b)、0917-27
新山(2236b)、1033 伏拝の分岐、1113-33 雪渓末端、1208-11 河原宿手前の沢、1217 河原宿手前の分岐で千畳ガ原へ、1242
月山森登山口、1258 幸治郎沢へ、1323-53千畳ガ原入り口の沢、1414 丁字分岐、1428-48 休憩、1507 鳥海湖上の分岐、1600頃
御浜小屋
周囲の人々につられて、目がさめたのは03:50。やはり朝食は外でする。前日に使った小屋裏の指定席は風が強かったので、小屋の前の石棚の上での食事とする。出発は05:20と悪くない。この夜は土曜ということもあり小屋は満杯になるらしい。躊躇するところがあったが、酒田でホテルを探すのも面倒だし(泊まったホテルに荷物を取りに寄った際に聞いてみたが、満室だったとのこと)、酒田からの高速バスは午後に出るので、午前中観光するにしても暑いだろうし、なにより山の中でゆっくりできる魅力は大きいので予定通り連泊することにする。荷物は最低限のものだけなので軽い。御田ガ原では前日と全く同じお花畑を通るのだが、印象は全く違う。後からの朝日が強く、花に力がない。
朝の御田ヶ原
七五三掛を過ぎるとすぐに稜線コースと千蛇谷コースに分かれる。前に来たとき千蛇谷を歩いたので、今回は稜線を選ぶ。展望はよいし、花も少なくないのでよい選択だった。前日には見なかったイワブクロなども出てきた。文殊岳の標識はあったが、伏拝岳には山頂標識はない。鳥海山の山頂部分が迫ってるが、どこが見えているのかは相変わらずはっきりしない。栗駒方面もかすかに見えているが、どんどん視界は悪くなっていく。頂上からの好展望は期待できそうにない。眺望を楽しむにはやはり山頂小屋に泊まる必要があるようだ。行者岳という標識はピークから少し下ったコルにあった。そこから大物忌神社へ行く道が分かれている。日射しがきついので、そこにあった小さな祠のそばの日陰で少し休み、中食を口に入れておく。固有種であるチョウカイフスマが咲いている。地味だが好ましい姿をしている。すがすがしい色のイワギキョウもかなり目につく。
七五三掛の上から来た道を振り返る (左奥は扇子森、右奥は稲倉岳) |
千蛇谷 |
百宅口コースへの分岐を過ぎるとすぐに七高山。霞んでいるが、一応パノラマ写真を撮った後、引き返して一旦大物忌神社まで下りて新山を目指す。直接行く道もあったのかもしれないが、どうもすっきりとした案内がない。新山手前で胎内くぐりなどをしているうちに下り道を歩いていたり、新山の隣のピークに登ったりとかなり無駄な動きをした。新山でも展望はなく、少しだけ日陰で休んだ後、下山する。大物忌神社で少し立止まり、中食。小屋の人に聞くと、行者岳へのコースはガレており推奨できないとのことだったが、そのコースから子供も上がってきたくらいだから大したことはないはず。確かにすこしガレていたが、どこにでもあるようなもの。考えてみるとこの山は石を敷き詰めたり、木道を完備したりするのが標準仕様になっているので、この程度のガレ場でも非推奨ということになるらしい。
新山(左)と七高山(中央奥)。 七高山の手前に大物忌神社が見える。 |
七高山(右上に標識)直下から新山の一部 |
行者岳に戻り、伏拝岳を少し過ぎたところの分岐を左に折れていく。少し行くと下に心字雪が見えてくる。「心」に見えなくもないが、どこから見ると本当の「心」になるのだろう。下からかなりの人が登ってくるが、誰もが暑さに参っているような雰囲気で、こちらは下りで気楽なのが申し訳ない。雪渓が近づくにつれて、涼しげな空気が漂ってくる。ところが雪渓に入るとむしろ暑い。照り返しがきついためだろうか。雪渓の末端で見つけた水流のそばで早速水遊び。そこから30分ほどで河原宿の小屋が近づき、きれいな川が流れているので、また水で頭を冷やす。河原宿に泊まっている人達だろう、川縁で優雅な時間を過ごしている家族連れなどもいる。
心字雪
小屋まで5分ほどの所に、月山森、千畳ガ原方面という標識が出てきた。小屋に行くのはやめてそちらに向かう。ここでも気楽な散歩という感じの幾人かを見かけた。確かに散歩するのに最高の場所だ。キンコウカ、ギボウシなどがこれまでと違った雰囲気を醸し出している。ゆったりとした道が月山森登山口の乗越まで続く。月山森に向かってしっかりとした道がついている。御浜からも堂々と見える山なので、登りたい気持ちもあったが、往復に30分程度はかかりそう。これから一旦千畳ガ原へ下り、暑い中を御浜まで登り返さないといけないことを考えてやめておく。そのあとも池などがある笹原が続き、そのなかをなだらかに下っていく。
月山森への木道
やがて道標や赤テープがある地点で左に折れ曲がり、幸治郎沢に入っていく。ここは大きな溶岩がゴロゴロしている急な下り坂だった。それ以前の風景との対比が大きい。それを下りきった千畳ガ原がまた穏やかな高原風となるので、さらにその特異性が目立つ。原のなかに流れる沢がいくつかあったので、また30分ほど水と戯れる。そのあとの沢はすべて涸れていた。鳥海湖の縁で前日歩いたコースとなる。水場に使っていた雪渓のところでまたストップ。
幸治郎沢の先に千畳ガ原 |
千畳ガ原(奥に扇子森) |
なんやかやで小屋に戻ったのは16:00頃。やはり人は多く、寝る場所は夕食後に小屋の人の指図で決めるらしい。こちらはまた小屋の裏の指定席で夕食。この日はカレーの予定だが、今回初めて米でなく、湯煎すれば食べられるご飯を持ってきた。山で暖めるのも大変なので、酒田のホテルで湯煎したのは名案だったが、そのままどこかに忘れてきた。北アルプスの行動食といい、今回のミスといい、老化現象が顕著になってきた。なんとか非常食などでやりくりする。さらにミスがあった。ガスカートリッジの分量を計算違いしていた。使い残しの2缶を持ってきたが、合わせて65g。これでは足りない。夕食後のお茶も飲めず、翌朝予定していたワンタンも作れないことになった。2缶もあるので大丈夫と錯覚していた。
小屋の夕食も済んだようだが、きれいな夕日を見てくださいという案内に従って、小屋前でゆっくりと過ごす。小屋に戻るともう場所がない。小屋の人が、団体の所に一つ場所を空けてくれるように頼んでくれる。それほど窮屈な夜ではなかったが、さすがに団体の女性軍はおしゃべりが好きで延々としゃべっていた。
2012. 08. 05 御浜小屋から大平山荘へへ |
コースタイム
0630 御浜小屋、0652 鳥海湖への分岐、0655 鉾立道への分岐、0737-57 見晴台(1260b)、0816 二の宿、0827 大平(おおだいら)登山口、0845-0955
大平山荘、1053 酒田駅前
大勢の客は頂上を目指して5時頃に出発するので、早くからゴソゴソしている。こちらは粘って布団の中にいたが、とうとう04:40に起床させられる。前日使った小屋前の石棚が占拠されていたので、少し下の大岩の上で朝食をとる。ガス欠なので、クラッカー類を、水で溶かしたコンソメスープと一緒に食べ、食後の緑茶も水で。ガスが動いて目の前に稲倉岳が姿を現す。
稲倉岳
やることもなくなったので、グズグズとして小屋の人としゃべったりする。花がすばらしかったと言うと、「少し遅かった。10日前なら小屋の前の斜面も一面の花だった」とのこと。「又、来てね」と何度か言われる。8時頃の出発でよいのだが、6時すぎは吹浦口に向かって歩き始める。しかし、象潟口をどんどん降りてしまい、10分してから気がついて戻る。小屋のすぐ下にあった分岐標識を見落としていたのだ。「又、来てね」に早速応えた形になった。06:30に再出発。30分ほどは前々日に登ってきた道だが、その後は初めての道。やはり新しい道はいろいろと目新しいことがあって楽しい。象潟口に比べて登ってくる人はほとんどないも同然。詳しい地図がないので、地形が読み取れず物足りない。見晴台が一つのポイントだが、見晴台らしき高みが何度も出てきては裏切られる。とうとう下り始めた。下り道に見晴台があってもなんの不思議もないと気がついた頃、見晴台に到着。小屋から1時間ほどだった。たいした見晴らしでもないが、すぐ下に大平山荘が見え、あと少しであることがわかる。急がないので、また日陰で休憩。下から何組かが上がってきてやはり立ち止まっている。この先の下り道は日陰の道となり、楽になる。石畳が敷いてあるのだが、そこに苔がつき、経験したことのない滑りやすさで、気を使う。二ノ宿というところに水場があると書いてあったので楽しみにしていたが、涸れていた。
清水大神のピーク
大平登山口に降り立ったのは08:27。1時間半後に出るバスまでなにもない登山口で過ごすわけにはいかない。そこから15分ほど下ると大平山荘がある。カンカン照りの自動車道はご免こうむりたいが、適当に日陰もあり、風もほどよく吹いていて、登山道より気持ちがよいくらいだった。ヘアピンを曲がり、風が後から吹くようになると、心地よさが半減するのが面白かった。山荘の食堂は営業前だったが、自販機でビールを買い、靴を脱いで靴下を乾かしながら、のんびり休憩する。定刻に来たバス内で大阪の単独中年女性と話す。これから月山と蔵王に行くというので色々と助言。山小屋で話した岐阜の高年男性二人組も、遠くから折角来たので、次は栗駒と言っておられた。遠くからの人は皆同じように考えるらしい。