2004. 12. 12 駒頭山
東北新幹線から見える山のなかでまだ一度も足を踏み入れていない領域なので、前から気になっていた。金土曜に秋田で、月曜に筑波で仕事があったので、それを合間を縫って鉛温泉に一泊しての計画を立てた。鉛温泉には、立っていないと入れないほど深い湯漕があるというので、楽しみにしていた。深いことも珍しかったが、それよりものすごく静かなことが気に入った。湯は風呂の底の岩の下から湧いており、湯口から流れる音もない。人がいても、音を立てるのがはばかれるような雰囲気で、絶対的な静けさが何とも言えない気持ちよい気分にしてくれる。湯屋自体も4階建て程度の高さがあり、湯船の中に立って、上を見上げると本当に落ち着いてくる。
同行: 単独
コースタイム
730 鉛温泉、815 尾根、905 分岐点、910 ロボット雨量観測所、1018-1038 駒頭山、1109-1145 963 m峰、1220 駒頭山、1324 分岐点、1333 林道、1426
鉛温泉
帯状疱疹が大体直って、久しぶりの登山である。晴れ上がった日曜日なのに、最初から最後まで誰にも会わない静かな一日であった。スキー場からのコースを登る。雪は全くないが、水溜まりはさすがに凍っている。ゲレンデの最後のスロープは少し急で、登りたくなかったので、リフトをくぐらずに右手の尾根を目指す。尾根に出てからはしっかりとした道となる。三叉路を過ぎると、尾根の方向が南西に向い、すぐにロボット雨量観測所。
それを過ぎて数分すると右手に次々と雪山が木の間隠れに顔を見せ始める。冬だから見通せるが、夏ならこうはいかない。和賀、モッコ、秋田駒、高倉、岩手がずらりと並んでいる。駒頭の一帯は新幹線から見るとどこがどこやらさっぱり見当がつかないようなとりとめのない山脈であるが、中を歩いても同様である。宮沢賢治の「なめとこ山の熊」に「なめとこ山のまわりもみんな青黒いなまこや海坊主のような山だ」とある。そのぴったりの形容に感心する。熊の糞さえあるところなど、彼の世界に迷い込んだような気分である。ブナの林はそれほどの大木はないが、美しい姿をみせ、上に向って闊達に枝をのばしている。展望がよくないとされている駒頭山頂上からもとぎれとぎれに上記の山が見える。3時間近く歩いたので、はじめて足を止め、少し腹にものを入れる。ほとんど汗もかかなかったので水を飲むのもはじめてである。シャツの上に着た長袖をときどき腕まくりをしたり、伸ばしたりといった気候である。じっとしていると温度はかなり低いので、寒くなるが、歩いている分には快適そのものである。
腹ごしらえを終え、より展望のよいP963 を目指す。30分で到達。新たに逆光にシルエットを見せて大きい焼石岳が目に飛び込んでくる。焼石の右手にかすかに見えるのは吹突山か。真昼岳は、松倉山の丁度後になっているのか、結局最後まではっきりと分らなかった。和賀、秋田駒は少し枝が邪魔になる。岩手山は雲に隠れてしまった。早池峰、薬師も見えている。駒頭山の左手、早池峰の手前には石鳥谷の町、右手には北上市が見えるので、このピークも新幹線から見えるはず。しかし、実際に見分けるのは不可能に近いだろう。ここでかなり腰を落ち着けてしまったので、かなり遠くに見える松倉山に足を伸ばすのをやめる。16時半には暗くなることもある。しかし、帰ってからガイドブックを見るとP963
mから25分とあったので、十分往復する余裕はあった。
腰を上げ、もう一度ぐるりと見渡すと、思いもかけず鳥海山が判別できた。雲かと思って見過ごしていたのである。分岐点からの帰りは、25000分の1には記載がないが、ガイドブックに出ていた林道の方へ下る。気のせいか早池峰が少し近づいたようで、早池峰らしくないずんぐりとした形に奇異な感じをもつ。途中で、あろうことかそちこちにフキノトウが顔を出している。異常気象もここまで来たかという感じである。下っていった林道が途中でなくなり、最後はまた山道になったが、これも奇妙なことである。藤三旅館に預けていた荷物をもらい、バスを待つ時間を利用してもう一度温泉に入れて貰う。今度は、一人以上は入れない川縁の露天風呂に入った。
P963から早池峰山の遠望
P963から見た駒頭山