2013. 1. 17 - 19 熊野参詣路小辺路
最近の日本海側は大雪に見舞われているので、予定していた高島トレイルでの一泊山行を自重し、南ならよかろうと伯母子岳を計画する。高野山から小辺路を歩いて伯母子岳に登り、ついでに護摩壇山と龍神岳をピストンしたのち、赤谷峰、清水峰を経て国道168の大塔温泉まで歩く2泊3日のコースだ。結果的にミスの連続でとんでもない山行となった。
同行: 単独
2013. 1. 17 高野山から水ヶ峰を経て大股近くまで |
コースタイム
0840 高野山千手院橋BS、0915-39 女人道分岐付近、1025 薄峠、1107-32 御殿川、1145 林道、1158 大滝集落、1256 高野龍神スカイライン、1334 水ヶ峰入口、1359-1420 水ヶ峰(1184)、1441 林道タイノ原線、1503-06 東屋、1544 平辻、1555 林道三差路、1636 T場
高野山のバスを千手院橋で下車。金剛三昧院の入口で右手の山道に入っていく。そこそこの雪が積もっている。大滝口という標識のところで少し視界が開ける。左手に三角形の楊柳山が望める。犬の散歩からもどってきた女性が通りかかったので、少し話をする。今年は雪がほとんどなかったが1/13の爆弾低気圧のときにどっと降ったのが残っていると話してくれた。やがて分岐点。左は女人高野道で数人の踏み跡、右は×印で全く踏み跡なし。×印は女人道ではありませんというようにも読み取れたので、どちらかというと南に向かっている右側の処女雪へスパッツを着けて入り込む。施錠された水道施設にぶつかり、引き返す。分岐点からすぐの所に本当の女人高野道への分岐があった。P966辺りで、霞んではいるが右前方の山を見ることができた。頂上に大きな塔のようなものが見える。護摩壇山が見えているのかもしれない。道が南から南東へと曲がった所でトレースが消え、ペースが落ちる。薄峠に着いたのは高野山を出てから正味1時間20分経っていた。無雪期ではあるが、皆さん50分足らずで歩いておられるので、かなり遅い。
そこから御殿川まで340mほどの下りになる。かなり下った所で左手に住居跡が見える。御殿川にかかる橋のすぐ手前に小さな水流があったので水を汲み、米を研ぎ、中食をとっておく。御殿川は、楊柳山から流れ出て高野山の町を通って来たのもので、いずれは有田川となる川だ。橋の近辺では川はうんと下を流れており水汲みなどはできなかった。少しだけ林道を歩くと大滝の集落になる。ここは人が住んでいるようだが、そのような気配は全く感じられなかった。村からしばらくの間トレースがあったが、村をはずれると消える。あちこちに高野マキが倒れている。風か雪かに弱いらしい。スカイラインに出て、そこを南下するとT字路になり、左折すると野迫川村、立里荒神社、平家の里へ行くとある。この辺りの広域地図を持ってきていないので、全体像がつかめない。スカイラインを30分ほど歩くと、水ヶ峰への入口となる。小辺路の案内板が設置されており、誰もが間違うことなくスカイラインから離れられるようになっている。
水ヶ峰には看板の所を左に上がっていく |
水ヶ峰集落跡 |
ここからは本当に何の痕跡もない新雪を踏んで登ることになる。若干傾斜もあるので、また速度が落ちる。途中の急傾斜の沢を横切るところではちょっと慎重になった。水ヶ峰の分岐に出るまで距離的には短いものだった。分岐を通り過ぎてすぐに水ヶ峰集落跡という標識があり、鉄条網が張られている。うしろが小高い山になっており、ここが水ヶ峰かと回り込んで登っておく。頂上にはなにもない。地形図のP1183の北東のふくらみのP1130+だったようだ。20分ほどして林道に出た。
林道を南に進むが、ここは適度に除雪されている。東屋があり、西南方向の展望が得られたので立ち止まる。水ヶ峰に登るのに20分、林道に出てから東屋まで20分。速度は4倍程度になっていたのにこれが頭になく、その後の誤算の伏線になった。平辻で林道からはずれないといけないのに、そのこともしっかり頭に入っていなかった。平辻の標識の写真(下の写真)を撮ったのに、書いてある説明を読まなかったという信じられないようなミスで、小辺路の入口を見逃して林道を歩き続けた。標識の字が暗かったとか、雪があったので見逃してしまったといったことは言い訳にならない。
前方は夏虫山などか
平辻(ここを右に入っていかねばならなかった)
そろそろ今西辻辺りかと思っていた頃に、突然林道のT字路にぶつかる。「大股」や「小辺路」の文字はない。小辺路をはずれていたので当然だが、そのときは不親切と思っただけだった。ここでGPSを取り出さなかったのも、大きな失敗。衛星をキャッチできたと思う。今西辻よりうんと先まで進んでいたことに後刻分かった。地図をもっと広い範囲で見ておれば、はっきりとした三差路が見つかったはず。西に進む道は除雪されており、「あまご釣場」「アドベンチャーランド」などの知らない施設の案内がある(こちらに進めばミスを回復できた)。東に進む道は雪が深いものの、一台だけ車の轍のあとがある。方向も妥当なのでそちらに進む。やがて道は南に向かい、大股の方へ行っているなと確信する。しばらくすると轍跡もなくなる。右下にいくつかの建物群が見えてきたのであと少しかなと思ったが、そのうち道が東方向にそれはじめ、かなり暗くなってきた。テント場にできるような水流を探しながら歩く。チョロチョロの沢を二つほど見過ごし、かなり広い路肩があったので、そこに決める。近くに水も流れている。大股に下りても、集落の中に適当な寝場所があるとも思えなかったので、これはこれでよいという気があった。外気温は−3℃。
野迫川温泉か
あとで調べて分かったのだが、県道733号の北側に平集落を通る林道があり、さらにその北側に林道がもう一本ある。そこを歩いていた。通り過ぎた三差路から大股までは2.5km。翌朝に通った野迫川温泉郷への分岐から大股までは3.1kmだった。かなり早い段階で護摩壇往復の計画は断念しており、2日目は伯母子周辺でゆっくりするつもりだったので、いずれの道を取っても翌日に伯母子岳の小屋までは登る分にはなんの問題もなかった。テントの中でも翌朝にも、現在地を調べる努力をほとんどしていないのは、あとで考えるとちょっと信じられない。
支柱をテントの端に差し込む際に先端の突起を折ってしまい、不安定のままの設営となった。5年間で75泊し、とくに最近では年に20泊ほども使っている。そろそろ寿命なのだろう。しかし、もう自分の年も年なので、新規購入するかどうかは微妙なタイミングだ。
2013. 1. 18 県道733号線、林道ホラ谷立里線など |
コースタイム
0815 T場、0828 野迫川温泉郷への道分岐、0854 平惟盛歴史の里まで1.9km、野迫川ホテルまで7.1kmとの標識、0900 林道ホラ谷立里線入口、0939 林道大崩落、1013-39 林道途絶、1118-23 林道入口、1226 北俣集落南端、1315-40 野迫川村役場、1355-1415 グリーンセンター、1455 大塔村への道分岐、1540 T場
5時に起床したが、ゆっくりして出発は8時過ぎ。まだこのときはそのうち大股に出るのだろうと楽観しており、いくら遅くても伯母子岳まで行くのは問題ないと考えていた。出発してすぐに大きな標識が出てきた。右へ行くと野迫川温泉郷とある。ここを右折しておれば、3.1kmで大股に行けたのに絶好の機会を逃してしまった。その30分後に再び大きな分岐。直進すると野迫川村役場まで7km、右後に戻っていくと平惟盛歴史の里1.9km、ホテル野迫川7.1kmとある。ここで県道733に合流したらしい。もちろんこれを戻っても大股に行くことはできた。
すぐに林道ホラ谷立里線入口につく。立里(たてり)まで行けば国道168号に近いと思いこんでいたので(それ自体も間違い)、雪が多いが右折して林道に入っていく。しばらくして一つだけあった車の轍跡も引き返している。かまわず前進すると、支沢を渡る橋の前後で林道が大崩壊していた。なんとか人間は通れた。それまで「道が分からなくなり沢に下りると動けなくなることがあるが、林道でそのようなことはないな」などと思っていたが、そうでもない場合もあり得るのだ。さらに30分ほど行くと、突然、道路がなくなる。どこに消えたのかと探したがない。ここまで延ばした林道工事が中断しているのだった。ちょうど時間もよかったので、中食とする。風は強いが青空も広がり、気分は悪くない。はじめてGPSが電波をキャッチしたので、居場所が確認できた。あとで調べると、ここは漁場保全の森作り事業のための林道開設工事としてH22〜24に1億5千万円が計上されているという。無駄遣いにならねばよいが。
土砂崩れでズタズタになった林道
道がなくなり来た道を引き返す
1時間10分で来た所を40分で県道まで下る。県道を右折して北上するとすぐに関電の北俣発電施設があり、北俣川に沿った道であることを確認できた。その時点で引き返しても大股まで大したことはなかったのだが、ちゃんとした地図もないので、その気になれなかった。1時間で北俣集落。川の向こう側にかなり戸数の家があるが、ここにも人の気配は感じられない。野迫川村の上垣内(かみがいと)に近づき、やっと電気の灯っている建物が出てきた。中に入って道を聞く。犬散歩の女性以来の会話で何となく嬉しかった。高野山への道を聞き、野迫川村役場が道沿いにあることを教えて貰う。役場で観光案内マップなどが手に入ればあとは問題ない。野迫川村役場についた頃にかなりの雪となったが、長続きはしなかった。中に入ってマップをもらい、親切な役場の人に色々と教えて貰う。高野山まで行きつかないかもしれないので、念のためペットボトルにお湯を1L貰っておく。
村はずれにある「食事処グリーンセンター」が閉店していたので、その前の階段に腰掛けて2度目の中食をとり、公衆トイレも使わせてもらう。雲海景勝地というスポットがいくつかあった。もう少し視界が効くと大峰山脈が見えるのだろうが、白六山の先にごく一部それらしきものが見えただけだった。
大峰山方向の山並み
車が停まり、中年女性が「歩くの?」と聞いてくれた。「大塔の方?」と聞くと「そうだ」という。「こちらは高野山に行くので」と言うと、「じゃあね」と気さくな感じで車を走らせていった。どこにも親切な人がいるものだ。大塔への分岐点を過ぎると2分おきくらいに番号のついた標識が出てくる。所々で展望が得られるが、どこかが見えているのかは分からない。高野山まで行けそうにないので、テントを張れる所を物色していると、最適の場所が見つかった。大きくカーブする所で、やや高台になっており、木も多いので、やや強くなってきた風もよけられそう。あまり道のそばではいやだが、ここなら車が通っても問題ない。ここに着くまでは車は1台も通らなかったが、テントを張ってから2台が通っていった。この日は、しっかりと雪を踏み固めてからテントを張ったので、前夜のようにだんだん沈み込んでいくというようなことは避けられた。翌朝にGPSでチェックすると、天狗木峠の手前のヘアピンカーブのところだった。就寝前の外気温は−8℃、テント内はずっと−6℃程度で、前夜より少し寒かった。
2013. 1. 19 天狗木峠から高野山へ |
コースタイム
0902 T場、0918-36 天狗木峠、0959 金刀比羅宮、1003-10 陣ヶ峰(1106)、1027-47 天狗木峠、1139 国道371号、1150-1243 奥の院入口、1309 一の橋、1352-58 大門、1403 国道480号から分かれて高野山駅へ、1445 高野山駅
野迫川村役場で西に800m行けば高野龍神スカイラインに出ると教わったが、天狗木峠経由で高野山にでることにした一つの理由は、峠の近くに陣ヶ峰というピークがあることを知っていたから。全く山に登らずに3日も過ごすなんて勿体ない。天候はかすかに青空も見えるという程度。テントから少し歩くと天狗木峠で、その直前に金刀比羅宮参詣道、陣ヶ峰という標識があった。峠まで行くと、T字路になっており、左が高野、右が大塔。ほかにいくつもの看板が出ている。バスの待合所のような建物があるので、そこでスパッツを着け、荷物をデポして陣ヶ峰に登りはじめる。かなりの雪を踏んで行く。多い所で30cm程度。もちろん歩いた形跡はない。雑な地図ではすぐそばのような感触だったが、傾斜もあり、結構の登り甲斐があった。金刀比羅宮の小さな社に着く。頂上かと思ったが、同じ程度の高さが少し続いているので念のため行ってみた。すぐに標識のある頂上があった。雪の下には一等三角点があるらしい。展望も少しあった。峠まで戻って、少しカロリー補給をする。
陣ヶ峰直前にある金刀比羅宮
桜峠を経て高野山町へと下っていく。スカイラインの入口の食堂で昼食をとり、高野山の案内図を貰う。町石道から帰りたかったので、前にゆっくり歩いた境内は省略。一の橋まで境内を歩いて、そこからまた町の中を歩く。マキの枝が売っていたので、土産によいかと小さなものを購入(これは4月末まで青々としたままだった)。大門まで来て町石道コースを覗くと雪もたっぷりあったので、九度山はおろか、最短の矢立から紀伊細川駅に下るコースでも暗くなる。サッとあきらめ、せめてケーブルの高野山駅までの道を歩くことにした。ここも山道ではなく車も走る舗装道路だった。途中で金剛山なども見えたのでまあまあよかった。高野山駅からのケーブル、極楽橋からの「天空」という特別列車、橋本からの急行と手際よく乗り継ぐことができて帰宅した。
高野山境内の司馬遼太郎文学碑
高野山根本大塔