2012. 07. 10 恵那山
100名山の中でも最後まで行かないだろうと考えていた山だが、ひょんな巡り合わせで登ることになった。東京からの帰りに北アルプスの縦走を予定していたが、黒部五郎=太郎平間がほとんど歩かれていないらしく、下手すると予定通りのタイムで歩けないと危惧した。次善の案として、前から考えていた越百から安平路地、摺古木への縦走を再検討した。これは2日目のヤブこぎの日はなんとしても晴れて欲しいが、天気予報ではかなりの雨らしい。それで北アルプスは10日後の出張に絡ませることにして、日帰りでの登山を探したところ恵那山が浮かんだ。この日だけは全国的に梅雨の晴れ間なので、ひょっとしたら好展望もあるかと期待した。
同行: 単独
コースタイム
0810 中津川駅(レンタカー)、0855-0904 神坂峠(1569b)、0922 パノラマコース頂上(1692b)、0941 鳥越峠(1550b)、1023-35
大判山(1696b)、1128 天狗の頭?(1870+b)、1136-56 昼食、1245 前宮ルート分岐、1310 頂上避難小屋(2191b)、1320-50
恵那山三角点(2190b)、1421 前宮ルート分岐、1550 大判山、1600-20 コルで休憩、1644 鳥越峠、1709-19 パノラマコース頂上、1733
神坂峠、1754-1812 強清水(1100b)、1850 中津川駅
名古屋のホテルに前泊。中津川駅でレンタカーをして、車を走らせていく。何度も何度も登山道という標識が出てくるが、林道が強清水から神坂峠へ続く登山道を寸断しながら作られているためらしい。途中の追分登山口に1台だけ車が停まっていた。こちらから登ると直接鳥越峠へ出ることができ、時間的にも30分ほど短縮できるが、その代わりすばらしい展望をミスすることになるという。神坂峠の登山口には3台の車が停まっていた。
出発点より標高がやや低い鳥越峠に向かっての出発となる。振り返ると気持ちよさそうな斜面の広がる富士見台が見える。タカネニガナ、マイヅルソウ(実)、ショウジョウバカマ(葉)、ギンリョウソウ、シナノオトギリソウ、キンバイソウなどがポチポチと道ばたを彩る。ウグイスが多い。「パノラマコース頂上」という奇妙な山名標識が出てくる。ぐるりと見回せるが、これから歩く尾根の左半分、恵那山のごく一部が見える程度だ。
富士見台高原
ホトトギスの声が聞こえるが、これだけ文字通りの「テッペンタケタカ」と聞こえたことはなかったのではないだろうか。カケスも。ウバナギを過ぎると大判山。ここには朽ちかけた棒きれに手で書かれた山名が消えかかっていた。上の方のガスが少し切れて天狗ナギのところの2つのピークが近づいてきたことが分かる。天狗の頭を越えたところで時計を見ると、分岐点まではかなりあることが分かり、食事をしておくことにする。かなり日差しがきつく、熱中症になりかねない暑さだったので、日陰を選んで腰を下ろす。食欲が減退する寸前のようで、ここで立ち止まったのは正解だった。トレールラン的な若者が早足で通り抜けていった。
恵那山が雲から顔を出し、右手には天狗のピーク
そのあと、マイヅルソウの花、コイワカガミ、サラサドウダンなどが出てくる。分岐の前は石の転がる歩きにくい急坂と読んでいたので、ナギのような所があるのかと予想していたが、単なる普通の登山道を歩いただけで、分岐点に到着する。そのあとはなだらかな稜線をたどるだけ。小さな三之宮社、四之宮社を過ぎると立派な避難小屋。その裏に展望に優れているという評判の大岩がある。この日は登っても無駄であることは明かなので、直接三角点に向かう。恵那神社奥宮本社のすぐ先が頂上だった。展望用のヤグラがあったので登るがなにも見えない。日差しを避けて、ヤグラの下に陣取り、コーヒーを沸かし、ついでにお茶も入れて、弁当の残りを口に入れておく。虫がうるさいので、買っておいた防虫用の塗り薬を初めてつけてみる。当初は有効だが、あまり長持ちしないようだった。広河原ルートの方へ少し行くと南アが見える場所があると書いてあったので、行ってみると、確かにそれらしき場所があった。この山も役行者が開山したというので、歴史は古い。ウェストンも登ったというが、もう一つ魅力が理解できない。展望があれば印象は違っただろうが、山そのものの魅力が分からない。ただ、あちこちの山々から眺めるときにはよく目立つので、親近感はかなりある。
恵那山頂
暑いわりにはゆっくりして、山頂をあとにする。小屋の中を一応見たのち、来た道を戻る。車登山ではこれしか選択肢がないのがつらい。石がゴロゴロする所を通り過ぎるとすぐに笹の道となる。天狗の頭で振り返ると、初めてガスがかからない恵那山が見えた。ノッペリととりとめのない姿で、適当にガスがかかっている方がよい。大判山を越えてしばらく行ったコルで立ち止まる。左側の谷から吹いてくるそよ風が実に心地よかったので、つい腰を下ろして、その静けさを楽しむ。枝や葉はそよいでいるのだが、音は全くしない。10分のつもりが、15分に、さらに20分にもなった。景色を見るわけでもなく、食事をするわけでもなく、身体を休めるわけでもないのに、こんなに長く立ち止まったことは記憶にない。少しガスも濃くなってきたのをしおに、やっと立ち上がる。今後、恵那山登山を思い出すとすると、間違いなくこの時間だろう。
鳥越峠からは、1日の最後にしては珍しい上り下りのあるフィナーレで、いくつかのピークを越え、パノラマコース頂上に戻る。ここでも風を楽しむ。ただし、先ほどのコルとはかなり雰囲気が違い、耳元で音もするし、虫も飛んでくる。ここでは風よりはむしろ雲に見とれる。積乱雲の先っぽに日が当たりきれいに輝く。そのうちガスがパッと晴れるかと思ったが、駄目だった。あとは神坂峠に下り、すぐに車を出す。強清水で停車し、頭、顔、手を洗い、身体を拭き、着替えを済ませ、荷物の整理を終えておく。ふんだんにきれいな水が噴き出しているのに、野生動物の大腸菌で汚染されている可能性があるので生で飲まないようにとの注意書きがある。昔旅人が喜んで飲んでいたときも同じような環境だったろうに。少し飲んだが美味だった。
かなり下って民家も出てくるようになった頃、北西の方向が開け、高峰山と思われる三角形の山がきれいに見えた。中津川駅の近くから見えるのと同じ。その左奥に二ツ森山。車を返却してから駅に行くと、すぐに特急に乗れたが、駅弁を食べる気がしなかったので、食堂でゆっくりビールを飲みながら夕食を食べ、次の快速で名古屋に出た。
高峰山