2011. 3. 9 ニセコアンヌプリ
北海道での仕事にわざわざ列車で出かけた。懸案の八戸=新青森間の新幹線からの展望を楽しむためである。往きは、曇り空で、どこから見えそうかという見当をつけただけ。帰りは曇空ながら、大体どこに八甲田が見えるかは分かった。ついでに、ニセコアンヌプリ近辺での登山を楽しんだ。以前に朝里岳に登ったときのような、低温・視界不良といった北海道の厳しさを味わえなかったが、楽しい春山気分の登山ももちろん悪くない。
同行: 単独
コースタイム
817 ニセコアンヌプリ温泉、834-46 モイワスキー場、852 Bリフト上、903-18 ワカン装着、943-49 Aリフト上、1000 モイワ山(839)、1105-15 938m地点、1239 頂上手前のサブピーク、1248-1320 ニセコアンヌプリ(1308)、1335-37 南峰、1343-46 キング第4リフト上、1425-1510 ヒュッテキングベル、1540-46 ヒラフスキー場下、1700 比羅夫駅
ニセコアンヌプリ温泉に前日宿泊。最初は宿の車でモイワスキー場まで送って貰うことにしていたが、朝食が早く終わったので、ブラブラ歩いて行くことにする。スキー場に着くと、Aリフトは案内とは違って9:30に開始という。そこまで待つのもバカバカしいので、すでに動いているBリフトで途中まで登り、終点から歩き始める。しばらくすると、ニセコスキー場の方面が見え始める。圧雪状態でないところも出てきたので、ワカンをつける。それほど指が冷たくならないのは助かったが、やや手間取って15分も立ち止まってしまう。Aリフトのほぼ上まで来たところで、動き始めたリフトの最初の客が降りていった。すぐ上に、スキー場から出るゲートがあり、係員がリフトに乗ったことは内緒にしておいてほしいと言われる。これまで不思議だったが、これは運輸局の指導のためいうことを初めて知った。「夏のリフトもあるのに」と係員もよくわからないようだ。
ガスの中のモイワ山を望む
すぐ目の前に雪庇を載せたモイワ山が控えている。少し左側から回り込んで、頂上に立つ。スキーヤー達はこんな所には立ち寄らず、まっすぐに林道を滑っていくので、誰の足跡もない。適当に斜面を下り、林道に出る。少し歩くと、ほとんどの人が林道を離れて、見返坂の手前の谷へ滑り込んでいく。圧雪されているのはここまでの間だけだった。その後も少しはトレースがあったが、すぐになくなり、気ままにルートをとってアンヌプリの西尾根の方へ進む。ところどころにウサギの足跡がある。西尾根は下部だけがガスの中に見えている。五色温泉の方も、少し上の台地の辺りまでが見えている。気ままに進んだつもりだったが、あとでGPSの記録をみると、ほぼ夏道に沿って歩いていたようだ。西尾根に取り付けば、日曜日でもあり、五色温泉から登っている人の跡があるのではないかと考えていたが、全くない。そこから夏道は大きくジグザグを描いているが、この日はほぼ直線状に登る。しばらく登ると、後方に五色温泉の建物群がはっきりと見えるようになる。
2度ほど、雪を踏み抜き腰までもぐる。雪庇などではなく、中が空洞になっていただけだが、気勢がそがれる。ちょうどそのころ風が出始め、雪が舞い始めたので、少し立ち止まって、どら焼きなどを口に入れ、テルモスの紅茶を飲む。無理はしないようにと女房殿に釘をさされているので、そのつもりだが、引き返すにしてもまだ時間はたっぷりとあるし、午後から好転するという予報もあったので、12時まで進んでから判断しようと前進する。10分ほどすると、急にまわりの明るさが増し、雪も止む。明るくなると、それまで目に入らなかったスキーのシュプールなどが見えるようになった。尾根も狭まってきたので、皆が同じようなところを歩いているためかもしれないが、かなり安心度は増した。
イワオヌプリが全容を見せ始める
その後は、イワオヌプリ、ニトヌプリ、チセヌプリなどが次々と顔を見せ始める。しかし、全部が同時に見えることはない。ワイスホルンも一部だが見える。アンヌプリの方向はいつまでもガスが切れない。西峰(勝手につけた名前)と南峰がやっと見えたのは、明るくなって30分ほど経ってからだった。本来のジグザグ道を直登する辺りも最短コースで歩いたので、やはりかなり急だった。うしろを振り返るとかなりの高度感がある。クラストしているが、ワカンの爪で問題はない。
やがて西峰に到着。ここまでは無人の領域だったが、ここからすぐ目の前のアンヌプリの頂上には休んでいる大勢のスキーヤー、ボーダーが目に入る。本峰からの西の展望がどうなのか分からないので、ここで写真をしっかりと撮っておく。チセヌプリの後方にはシャクナゲ岳も存在感ある姿。ここからの南峰はスッキリとした三角峰で、ベッタリした本峰よりずっと美しい。すぐに本峰に到着。大勢の人が日だまりの中で楽しそうに休んでいる。反対側には7合目程度まで雲に覆われた羊蹄山が聳えている。ワイスホルンも頂上まで見えるようになった。南峰との間のコルをめざして登ってくるスキーヤーの列が蟻の行列のように見える。もちろんコルからこちらの頂上に向かう人も多い。避難小屋の中には誰もいなかったので、ベンチに腰を下ろして、中食をとる。入ってきたスキーヤーが「こんなもので歩くのですか」と物珍しそうに話しかけてくる。
翳っているツインピークがニトヌプリ、奥の白いのがチセヌプリ、さらに左奥がシャクナゲ岳
右手前はイワオヌプリ、その奥のツインは大沼の近くのP1000+(ニセコアンヌプリ頂上から)
十分休んで外に出ると、外人のグループがシャッターを押してくれと日本語で頼んでくる。ドイツ、オーストラリア、カナダ、イギリスなどからの5人組。コルへと下りていく。少し角度が変わったので、モイワ山から西尾根を越え、西峰に至るまでの全貌を望めるようになる。モイワスキー場リフト終点の小屋、国道58号線、五色温泉などもはっきりと認識できる。シャクナゲ岳、チセヌプリ、ニトヌプリなどは、見えたり翳ったりと忙しい。コルから南峰へと登る途中のクラストした急坂で、数歩程度ずり落ちるが、すぐに止まった。南峰では、羊蹄山の明瞭さがやや増してきた。少し風もあったので、すぐにコルへ下り、スキー場に向かう。多くの人とすれ違うが、ボードを持った人などはなかなか大変そうだ。外国人も多い。
キング第4リフトの終点にあるゲートを通過すると、あとは衝突される心配の全くない広々としたゲレンデを下りるだけだ。宿に早く着きすぎてもつまらないので、キングベルというレストランで一休みし、ラーメンを食べる。ここらあたりから上を振り返ると、本峰と南峰が並んで見えるが、南峰が二つコブに見えるのが、やや納得がいかない。羊蹄山はますます明瞭になり、日が当たるようにもなった。ニセコグランヒラフの町並みをめざして歩く。34°あるという国体コースは滑るのはとんでもないという感じだが、ワカンなら全然怖くない。
スキー場の奥に後方羊蹄山
1時間10分ほどの歩きでスキー場を下りきり、その後同じくらい歩いて比羅夫駅に着く。宿は駅舎の中にある大変ユニークなもの。管理人は別棟におられ、全くなんの音もしないのは、藤三旅館(鉛温泉)の白猿の湯を思い出させる。食事をとっていると、前に列車が止まる。乗客の顔がすぐそこに見える。ホームから入る風呂場には丸木をくりぬいた湯船が据え付けられている。値段も安く常連のファンも多いらしい。かいこ棚のような部屋に東京から来たという相客が一人。2泊目だという。
プラットホームの中にある風呂場