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2009. 12. 13 - 15  羽鳥峰 




最初、杠葉尾から瀬戸峠を越える計画をしていたが、今年からバス時刻変更のため不可能となってしまっていた。急遽、三重県から入ることにした。快晴だったので、近鉄湯ノ山線からのすばらしい展望を十分楽しめ、気分のよい出だしとなった。野登山、仙ヶ岳、入道ヶ岳、水沢岳(宮越山)、鎌ヶ岳、御在所山、国見岳、釈迦ヶ岳、竜ヶ岳、多分藤原岳までの刻々と変わる大パノラマ。行きも帰りも御在所経由では面白くないので、タクシーを使って朝明渓谷から入山することにした。



同行: 単独

2009.12.13 朝明からヒロ沢まで  


コースタイ


1025 朝明ヒュッテ、1050 中峠分岐、1100 なわだるみ、1123-43 中食休憩、1207-11 羽鳥峰(823)、1312-1420 ヒロ沢出合、1503-24 天狗滝、1557 ヒロ沢出合

タクシーの運転手に、松尾尾根辺りから歩き始めるので、手前で降ろしてくれと頼んでおいたのに通じなかったのか、ヒュッテの所まで行ってしまう。山でもいくらでも時間をつぶせるので、まあよしとする。閑散とした朝明渓谷を通り過ぎ、猫谷にある「なわだるみ」という面白い堰堤で谷コースと分岐する。今回は、この辺りになじみがないので最もポピュラーな林道コースをとる。林道といっても、単車でさえ通りにくそうな荒れ方だ。ジグザグを終わると、だんだん開けた感じになってくる。登り終えた数人とすれ違う。稜線は風がきつそうなので、適当な日だまりで中食とする。その後、しばらくすると羽鳥峰のピラミッドの先っぽが見えた。「暗くなるのが早いので、早めの下山を」と書いた標識を建てるために入っていた2人連れと喋っているうちに分岐点に到達。こちらは左手の羽鳥峰を目指す。25000地形図にもピークとして認知されていないほどの小さな盛り上がりだが、個性豊か。大きな花崗岩が聳えていたのが、時間と共に崩れていって、このようなミニ・コニーデができたのだろう。頂上から東にはP908が目の前にあり、歩いてきた林道の先にハライド(908)がとがっている。青岳、国見岳方面も逆光でスッキリしないが、一応全部見えている。西側には銚子ヶ口。





かわいらしい羽鳥峰





羽鳥峰から正面にP906



峠からヒロ沢への道へ入ると、しばらくはぬかるみになっており、歩きづらい。羽鳥湿原というらしい。夏にはどんな花が咲くのだろうか。こんなに近くに水があるのなら、羽鳥峰峠でのテント泊も可能だ。小さな滝などもあり、退屈することもなく出合に出る。白い巨岩と青い清流が広がる開放的な雰囲気が愛知川源流の魅力だ。テントを張り、コーヒーを飲んでいると、お金明神からの帰りという女性グループと天狗滝から帰ってきた男性グループが通り過ぎていった。このあとは、2日半誰にも会わない。しかし、中部国際空港開港以来多くなったらしいジェット機の音がしばしば聞こえてくるので、秘境という気分を味わえない。





ヒロ谷出合



まだ十分の時間があるので、前回諦めた天狗滝=ヒロ沢間の道を歩くことにする。別に何の苦労もなく天狗滝に到達する。地図に点線が引かれているところは一応ちゃんとしており、ミスさえしなければ迷うことはないということがはっきり分かった。テープがしばらく見えないと引き返せばよいのだ。一ヶ所だけ迷ったが、それは紛らわしいテープのため。分岐点で赤緑のテープがあり、一応左手に下る方向をとってみた。すぐあとにも同じテープがあったので、確信して進んで行ったが、5分歩いてもそのあとのフォローがなく、道はなくなってきた。これはおかしいと引き返すと、先ほどの分岐の右前方に下る道があり、ロープまであった。このような個人的な都合によるテープは分岐点だけにしておいて欲しいものだ。

天狗滝の所の小沢に降り、対岸に登ると前回通り過ぎた天狗滝の入口となる。すぐ下が天狗滝。前回は余りにもひどい迷いのあとでここに到達し、危険とあったので無理に見ようとは思わずに、本谷の気分のよいところが見えたので、そこで大休憩をとったのである。そして、そのあと上流のヒロ谷に向かう所でまたまた40分も迷い、結局は下流の白滝谷へ戻ることにした。やや混乱して引き返したので、その際にも滝を見る気になれなかった。実際は「危険」という入口から数歩進めば滝が見えたので、バカみたいだった。切れそうなロープを伝わって下に降りるのであるが、最初のロープは問題ないが、2段目は確かに危ない。ハングした壁をそれに頼って降りるようになっている。その脇の方がはるかに安全そうなので、そこに細引きを垂らして降りてみた。滝の姿は一層引き立って見える。なかなか魅力あるポイントだ。そこからさらに下がるのは、すこし危なそうなので、今回は自重する。下流方面も美しいので、もう少し歩きたい所だが、今年は散々危ない目にあっているし、人が来る気配のない夕方なので、やめておいた。滝の落ち口に戻り、前回のミスを考えた。正しい道は小沢に降りて、そのまま対岸に登ればよいのだが、前回は滝口の川床から直接上の方へかき分けて入って行ったのが問題だったような気がする。それにしても、多くのテープを見たのだから、完全にミスしていたわけでもないはず。今回も似たような沢山のテープが貼られた広い場所を通り過ぎたが、どうも前回の記憶と結びつかなかった。天狗滝からヒロ沢まで、今回は30分。






天狗滝



この日の夜は、日本酒とおでんの夕食。焚き火を熾し、微温湯で暖ためながらとしゃれ込む計画だったが、うまくいかなかった。新聞紙一枚で火はすぐについたが、風があちこちの方向から吹いてくるので、落ち着いて焚き火の前に座っていることができなかった。18:30にはシュラフに。ヘッドランプの電池切れで、暗い夜となる。出る前に予備電池を探したが見あたらず、前回に替えたはずだからと、そのまま出てきたのがまずかった。




2009.12.14 オゾ谷、ワサビ峠、高岩、お金明神

コースタイ

815 ヒロ沢出合、910-17 お金明神登山口、941-57 大瀞、1025-30 オゾ谷出合、1114-30 クラシ分岐、1147-49 ワサビ峠、1154 高岩(965)、作の峰(948)、1229-35 お金峠、お金明神、1333 登山口、1400 ヒロ沢出合

かなり寒かったが、ホカロンでかなりよく眠れた。3:30頃に外に出ると満天の星空。真上に北斗七星がかかり、西の稜線にオリオンのリゲルが足を架けようとしていた。そのあと、なんと6:30まで寝ていた。起きると−5℃程度。薄曇りのようだったが、朝の支度をしていると、西の稜線に次々と朝日が差し始め、やはり晴れだったのだと嬉しくなる。どこまで行かないといけないという日ではないので、気楽そのものだ。ザックもほとんど空のままで出発。まずは神崎川を渡らねばならない。大した水量でないので気楽に考えていたが、やはりいざ渡るとなると、なかなかすぐによい所が見つからない。なんとか靴を濡らす程度で渡れる所が見つかり、飛び石伝いに渡り終える。こんなときは、2本のポールが役に立つ。

対岸の崖を登ると踏み跡が見つかり、やがて登山道らしくなる。下り口を覚えておくため目印をつける。そのあとは左岸をほとんど問題なく歩く。途中でUターンしてしまうミスがあり笑ってしまう。前方から朝日が射し、まぶしい。炭焼きの跡がある。お金明神の登り口にもしっかりした標識がある。ここから登ることを考えていたが、ここへ降りてくる逆コースに変更。次の目玉は大瀞。腐りかけた鉄橋がよく話題にされるが、その手前に川原へ降りる道がつけられており、そこで渡渉することが強く要請されている。川原に降りた前方にある谷から登るようになっている。これは下水晶谷のすぐ北の谷だろうか。上流側には切り立った崖の上に鉄橋が見えている。下流側の流れも落ち着いたなかなかの光景だ。その後、上に登り、鉄橋のそばまで行ってみる。危なかしそうに傾いではいるが、なんとか渡れそうだ。直前の人はいつ渡ったのかしらないが、少なくとも安全に渡ったことは間違いない。





大瀞の流れ






大瀞にかかる鉄橋




オゾ谷までの間に何度か川に近づく。その度に川原まで降りて、左右を見回す。どこも似てはいるが、それぞれの個性があり、見飽きない。水は限りなく透明だ。オゾ谷の出合にも標識がある。ここから上流側を見ると、川面が日の光を反射して、全面が光っている。さて、いよいよオゾ谷。マンガン鉱山の石組みが残っており、所々鉱口が開いている。とにかく狭い口だ。どなたかのHPが絶賛しておられた空色の長い引っ越しテープがあちこちにひらめいている。確かに分かりやすいが、とても誉める気にはなれない。目印は、ひっそりと細い木の幹に巻かれていて、どうもおかしいかなと心配になったときに、「ここで間違いないですよ」と静かに語りかけてくれる位がよい。こういう目立つテープが全面に張り巡らされると、山の静けさがなくなるし、なにより頭を使う機会がなくなって面白くない。何も考えなくとも安全に歩ける百名山などと同じになってしまう。クラシへの道との分岐点に出る。ワサビ峠の方へ少し上がって日が射している所に腰を下ろし、中食をとる。まっすぐ谷を詰めれば峠である。道は谷の脇につけられている。空色テープがなければ悩んだかなと思われる所が1ヶ所だけあった。





オゾ谷の遺構



ワサビ峠では雲行きが怪しくなってきた。出発が遅かったし、トロトロと歩いてきたので、正午近くになっている。ヘッドランプがないので、暗くならないうちに戻らないといけないのはもちろんのこと、テントに戻ってからも、多少の明るい時間を確保しておかないといけない。最初はワサビ峠から上谷尻谷へ下りて、コリカキ場経由でお金明神に行くことを予定していたが、多少迷う可能性もある。尾根道でお金峠へ出る分にはほとんど問題がないだろうと、コースを変更する。

ちょっと登っただけで高岩に着き、さらに進むと一作ノ峰となる。道もはっきりしているので、大体の感じがつかめる。その後、お金峠までは少しの上り下りがある。お金峠でとうとう白いものが舞ってきた。コリカキ場の方は少し急な斜面となっている。ここはまたの楽しみにとっておき、あとはお金明神に立ち寄って早めに帰ることにする。神崎川の方へ下っていき、テープに導かれてやや北方向に進むと、ここがお金明神という標識があった。ところが、なんとお金明神そのものが見つからない。周りをウロウロと15分ばかり探ってみたが、どうも見あたらない。不適切な道標だ。そこから少し戻ると、南へ下りていく道があり、それを下りるとやがて東方向に向きを変えるので、間違いなく神崎川に下りていく道であることを確信する。いずれコリカキ場に来る際にもう一度探してみることにする。(2010. 04. 24に再訪して確認したが、お金明神はこの標識からさらに数分下りていった所にあることが判明した。そのときにはこの不適切な道標は撤去されていた)


登山口まで下りると、あとはもう何も見るものもなく、ヒロ谷に戻るだけ。登ってきた所を見過ごして、出合を通り過ぎて川原に降り立つ。少し下流側に来ただけで、すっかり景観が違うのが面白い。少し引き返して、渡渉点を見つけ出す。朝に渡った所を反対向きに渡るのは少し厄介なので、やや離れたところで渡る。このときも、靴が少しだけ水に浸かった程度で渡れたので助かった。この日も焚き火をしながら、食事をする。

ヘッドランプが使えないので、明るいうちにすべてを終え、あとはローソクの灯でなんとかする。夜中に起きたときは、携帯の明かりを利用すると問題なかった。この夜も星が盛大に瞬いていた。





ヒロ沢出合の少し下流




2009.12.15 白滝谷、羽鳥峰、国見岳を経て湯ノ山温泉

コースタイ

700 ヒロ沢出合、733 天狗滝、805-26 白滝谷出合、900 廃屋、909 右岸へ、934 左岸へ、955 国境稜線、1003-26 羽鳥峰(823)、1100 金山(906)、1120-23 中峠、1149-54 水晶岳(954)、1216-20 根の平峠(803)、1403-08 国見岳(1175)、1429 国見峠、1544-48 藤内小屋、1633 蒼滝、1700 砂防ダム、1715 蒼滝、1725 蒼滝不動明、1749 湯の山温泉バス停

この日は前日と違い、早めに出発したいので、4:40頃に起床する。それなのにグズグズして、出発まで2:20もかかってしまった。ひとつには、明かりがないため、調理するにもなにかと不都合だったことがある。バーナーの火を照明用にも使っているうちに、突然火が消えた。十分あるとの計算で予備も持ってきていなかった。少し暖めて開放にしても、なんの匂いもしない。帰宅後、調べるとまだ空にはなっておらず、キツネにつままれたよう。とにかく、雨も降らない中で撤収できてなによりだ。

日没が早いのに、ヘッドランプまで使えないとあっては、釈迦ヶ岳を往復して湯の山温泉に下山するのは無理だ。まっすぐ湯の山へ行ったのでは、早く着きすぎる。それではあまりにもったいないので、白滝谷まで一旦下って、そこから羽鳥峰峠に登るコースを考えた。以前に、天狗滝と白滝谷出合の間で散々苦労したので、このままだとトラウマになって、今後あの区域には踏み込めなくなるかもしれないので、それを克服しようというのが理由の一つ。もう一つは天狗滝からヒロ谷へ抜けられずに引き返したが、今回歩いてみると、どうということのない普通の山道だったこと、つまり間違わなければ、なんの問題もないという確信をもてたことがもう一つの理由。

天狗滝までは、前日に2度歩いているので、もう間違わない。天狗滝を過ぎて、10分も進むと、見覚えのない危なっかしい木の橋があり、横にトラロープがかかっている。明らかに前回はここを通っていない。さらに10分で、乗越になった所に羽鳥峰という標識がある。そこに手書きでヒロ沢、白滝谷の矢印が書き込まれている。金属製の板の左半分が千切られており、そこに別の情報が書き込まれていたような雰囲気。前回、乗越のような所を、往きも帰りも通った記憶があるが、この標識に見覚えはない。さらに10分足らずで「琵琶湖鈴鹿縦走ライン」という古びた標識。これも知らない。さらに10分で白滝谷出合となる。前回、かなり上流で白滝谷に出会ったというGPSの証拠があるにもかかわらず、結局のところ、どこをウロウロしていたのかは全然解明できなかった。結局、前回4時間20分かかった天狗滝から白滝谷出合までの道を、今回の所要時間は30分だった。





白滝谷出合付近



前回テントを張った川原には、その時のような砂地はなく、様相が変わっている。テントを張るには少し上の台地のような所しかない。着いたときは見落としていたが、その台地に羽鳥峰への方向を示したごく小さな標識が足下に置いてあった。そこから峠までの道はしっかりしており、テープもほとんどないが気楽な歩行ができる。小さな滝などもある。だんだん前方の空が近づいてきて、いつも苦労する奥座敷と別れることによる解放感が湧いてくる。もちろん一方では、好きな場所と別れることの寂しさもある。空が広がっても、まだ白滝沢は愛知川源流の面影を残しており、なかなか水量が減らない。谷間にもようやく朝日が差し始め、ヒノキの植林が出てくる。周りにゴミが散らばる廃屋を過ぎ、きれいなナメの所で右岸に渡る。そこから25分で左岸に渡る。その後、何回か小さな沢を渡ることになるが、このあたりはテープの助けを借りないと、分かりづらそうだった。鹿の声が盛んにするが、姿は見えない。

国境稜線にでて、羽鳥峰の頂上まで進み、ザックを下ろす。P908、国見方面、銚子ヶ口などの景色は前々日と同じだが、若干透明度はよい。中食を食べてから、経験のない国見岳までの縦走を開始する。名前をよく見ていた中峠、根の平峠、国見峠を通るのが楽しみだ。ササ、アセビ、ヒカゲノカズラなどを分けながら金山に向かう。しかし、全般的に手入れが行き届いており、歩くのに苦労するということはない。途中で東側の四日市コンビナートが広がり、川越発電所の白煙も見える。東北東に雪山らしいものが見え、恵那山だろうと考えた。ところがしばらく進むとさらに左手に、より高そうな山が見え、黒々していたので混乱した。御嶽まではいかない山だろう。折角だからと、水晶岳に立ち寄ったが、期待以上の展望があり、値打ちがあった。サンヤリ、天狗堂、水木野の奥に霊仙山、鈴ヶ岳、御池岳、静ヶ岳、藤原岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳、国見岳、御在所山(多分)、雨乞山、イブネ、クラシ、銚子ヶ口。





水晶岳から国見方面




根の平峠には、ゆったりとしたスペースがある。すぐに水場に出られるらしいので、気持ちのよいテント場としてに使える。少し下ったところには、かつて「根の代」と呼ばれる集落があったとか。滋賀と三重を結ぶ重要な峠道だったことが分かる。根の平峠からの270 mの登りは結構のものだった。いつ水晶岳の高さを凌駕するかと、なんども後をふり返る。大体肩を並べたなという辺りから傾斜がゆるみ、歩きやすくなる。東に道が折れ曲がる辺りで、展望がよくなるが、ガスが巻きはじめ、国見岳の頂上が隠れはじめる。青岳、国見岳に来ても同様で、展望はない。石門をチラリと見る。なかなか風格がある。峠へと下る。100m近く下るので当然だったのだが、地図がよく頭に入っていなかったので、意外に遠く感じた。

下山路は、御在所経由も含めいくつもあるが、それほど時間の余裕があるわけでもないので、まずはこの辺りの初心者として、最も歩きやすい国見峠からの裏道を選択する。七合目辺りから藤内壁などの岩壁が迫ってくる。そして2008. 9の大雨で大被害の出た北谷へと入っていく。1年ちょっと経っただけなのに、登山道の整備は完璧だった。藤内小屋などの惨状はまだ目を覆うばかりだ。藤内小屋で作業をしていた人としばらく立ち話をしたが、登山道をほとんど人力で整備したという。「これだけが武器です」と背中に背負ったものは、自分のザックより小さく、軽い感じのもの。かなり大きな石で階段状の登山道ができていたのに、人力だけとは驚き、頭が下がる。日向小屋あたりでは、川の中に重機が入って作業をしていたが、そこではかなりの高巻き道ができていた。斜面をジグザグに切りながら、川面より50mもの高さまで、登らされた。






修理中の藤内小屋



最後に鈴鹿スカイラインをくぐり、ややこしい道を進むと、三差路にでて、左手に行くと蒼滝と表示がでていた。蒼滝から湯の山温泉まで15分程度ということを知っていたので、あまり考えずにそちらに進む。かなり階段を下りて、薄暗くなってきた蒼滝に着く。予想以上に立派なもので、しばらく見とれる。水量は多くないが、流れの両脇が褐色をしているのが目立つ。大水害のときに岩で擦られたためという話を読んだが、本当だろうか。最終バスの時間まで30分ある。珍しく道迷いもなく3日の楽しい山旅が終わったと思ったが、実はそうではなかった。今回の最大の危機が待っていた。





薄暗くなってきた蒼滝



滝の所に「工事中のため温泉へは通り抜けできません」という看板が立っていた。本当に歩けないなら、上のスカイライン、あるいは三差路の所に表示しておいてほしいものだと考えながら、崩れた谷間を覗き込む。何とかなりそうなので、一度片づけたポールを取りだして、大きな岩がゴロゴロしている沢の中を辿りはじめる。所々にテープがぶら下がっているが、やがてダムの所で行き詰まった。暗い所で地図を見ると右岸に道が書いてあるので、一度崖をよじ登りはじめたが、とても登れそうにない。ランプもガスもないまま、こんな所で夜を過ごすわけにはいかない。やっと引き返す気になったが、闇がせまるのと競争だ。かすかな残光を頼りに3度ばかりの渡渉を終え、滝の所に戻ったのは、真っ暗になる寸前だった。またあちこちに怪我をしてしまった。階段を上がるときには、もうほとんど見えない。スカイラインに出ればあとは真っ暗でもなんとかなると、たかをくくっていたが、これもとんでもない思いこみだった。スカイラインを下りていくと、温泉街には出ずに、近鉄の駅辺りまで歩くはめになっていたのだ。しかも不通で、車も走っていないので、真っ暗だった可能性がある。

しかし、三差路まで戻って暗くなってほとんど読めない標識をよくみると、蒼滝不動がすぐそばにあることが分かった。そこまで行くと街灯もついていたので、ホッとする。案内地図もあり、温泉街へ下りていく道は階段の印がついている。街灯も点々とあるので、真っ暗になったのはほんの3ヶ所程度。携帯電話の明かりで、簡単にしのぐことができた。温泉街には、食堂も土産物屋もビールの自販機もない。バスもなくなってしまったので、タクシーを呼んで、近鉄の駅に向かう。大阪に向かう電車はまだいくらでもあったのが幸いだった。

帰ってからよく調べると、蒼滝の遊歩道は不通であることはあちこちに書かれている。それにしても、分岐点のところにそのことを書いておいて欲しかった。そして、よく地図を見ると、遊歩道がダムを越えるのは右岸ではなく左岸だった。それほど厳しい傾斜ではないので、ひょっとしたら何とかなったかもしれない。

2009年4月頃には、裏道は3年間使えないと看板が出ていたらしい。裏道が大丈夫であることは、事前に確認していたが、それも前日くらいに知ったことで、災害のことを知らないままに出ていた可能性があるので、要注意だ。





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