2008. 09. 19-21 祖母山、傾山
大分で9/18の午後と9/19の午前に仕事があるので、一日早く出て前回上まで登れなかった由布岳に登ることを考えた。仕事の後は、祖母山、傾山の縦走という計画である。
同行: 単独
2008. 09. 19 尾平から九合目小屋まで |
コースタイム
1430 尾平BS、1438 吊り橋、1630-40 休憩、1701 大障子分岐、1805 九合目小屋
大分での仕事が終わったあと、急いで駅前のホテルでザックを受け取り、鯖、鰯、鰺などの寿司の詰め合わせを買ってから列車に飛び乗る。今回、初めての試みとして、革靴、ズボン、シャツなどの仕事着をロッカーに預けず、そのまま予備装備として持参してみる。結果としては正解だった。緒方駅を降りてみると、バスの時間が変わっていた。駅の出発は2分早く、尾平の到着は20分近く遅くなっていた。かなり離れた集落まで往復するサービスをはじめたためというが、こちらは九合目小屋に明るいうちに着きたいので、少し気になる。コミュニティーバスというもので、スーパーや病院のある停留所から老人達が6-7人乗り込んできて、次々と和やかに挨拶を交わしながら降りていく。運転手としゃべっているうちに、登山口を通り過ぎて、終点まで行ってしまうが、すぐ引き返したので問題はなかった。1時間20分乗って300円均一とはとてつもなく安いが、お釣りがないという。あり合わせの284円で構わないというおおらかさである。
歩き始めた方向の山にはガスがかかっているが、部分的にはギザギザの稜線も見えている。吊り橋を渡ると、林道コースと尾根コースの分岐となる。尾根コースの方が長いとあるのは納得できなかったが、尾根コースをとる。20分ほど登ると稜線にでて、少し風も感じられる。今回の全行程でよくみかける白にピンクのママコナに出会う。2時間歩いたので、展望は何もないが一休みとする。その後すぐに、障子岩からの道を合わせる6合目になる。地形図にあるP1402にあたる。障子岩からの険しい尾根を登ってくるのが、本当の意味での全縦走になるらしいが、今回の日程では無理である。
そののち神原からのメンノツラコースが右から合流してくる。入口の所だけなのかもしれないが、大変なヤブに覆われており、まるで廃道のようだ。そこから10分で小屋に着く。九州だけあって、18時でも十分明るい。管理人も客もいない。水場が近くにあるというのだが、案内がないので分からない。外にあった蛇口をひねると水が出てきた。天水を貯めたものらしく、薄く着色している。水にはがっかりだが、太陽電池が設置されており、蛍光灯が明々とつくので、豊かな気持ちになる。毛布も沢山使えるので、2000円の宿代もそれほど高い気がしない。小屋の前からは豊肥線沿線の町の灯りが見えており、星もでている。20時30分頃の遅い就寝となった。
霧の原生林
2008. 09. 20 九合目小屋から九折越小屋まで |
コースタイム
0615 九合目小屋、0630-40 祖母山(1756b)、0755-0803 ミヤマ公園(1634b)、0831-34 障子岳(1709b)、0932-40 古祖母山(1633b)、1043-1130 水場で昼食、1137 尾平越、1330-43 本谷山(1643b;ホンダニヤマ)、1440 笠松山(1522b)、1552 九折越小屋
この日は比較的余裕のある行程なので、5時に起き、6時の日の出も小屋で迎え、洋式トイレで用もすませて、出発は6:15となった。15分で頂上に着く。朝靄の中に、障子岩、大障子岩、傾山、本谷山、古祖母山の稜線が横たわり、本谷山、古祖母山の間の遠方には、桑原山、大崩山、古祖母の右手には尾鈴山と名前さえ初めての山々に初見参となった。尾鈴山に比べればうんと近いはずの阿蘇は辛うじて判別できる程度だ。それでも結果的には、今回の山行中でのベストの展望地となった。
祖母山頂上から障子岩方面
急な岩場をくだり、次は障子岳までで1ピッチかなと思っていたが、途中にミヤマ公園という見晴らしのよい所があったので、ザックをおろす。気が付かない間に天狗岩に登る入口を見逃して、通り過ぎてしまっていた。このピークから、初めて祖母山の山容を望むことができた。今回の山行で、最初で最後の眺めである。モッコリと首を傾げたような風貌で、この方角からではやや平凡な印象だ。
ミヤマ公園から祖母山を振り返る
障子岳を過ぎてしばらくすると、やっと気分のよい山道が出てきた。リンドウやアザミを見ながら進むとやがて古祖母山に着く。ガスが立ちこめはじめ、展望はなくなってしまった。この日の行程の中で名のある山を2つ終えたことになり、あと本谷山、笠松山の2つを残すだけになったのであるが、実際には1/3も来ていないという地点である。やがてブナの大木があり、きれいな水が流れている所にさしかかる。尾平越の手前であったが、少し早い昼食にする。気分のよい所だった。
ここを出るとママコナが群生している。すぐに尾平越で、古祖母山3 km、本谷山6 kmとの標識が立っている。先の長いことを示している。1.2 km先に水場があるとも書いてあったが、注意していたのに見逃したらしく、いつまで経っても1.2
kmが終わらない。今日のペースが特段に遅いのではないかと焦ってしまう。本谷山を望んだとき「遠いな」と思い、再度遠望した時にも「遠いな、そして高いな」と感じた。少し気合いを入れて挽回しようと思う。
その後は、降り出した雨の中を、一段と密集してきたスズダケの中をビッショリに濡れながら、ひたすら歩く。尾平越から2時間で本谷山に着く。「遠い、高い」という印象からすると、意外に早く着いてしまったというのが実感である。少し雨も小降りになったので、果物のゼリーを食べながらの休憩とする。その後も、雨模様は続き、スズタケも続く。Tシャツ1枚でも、夕立の中を歩く感覚でおれるのはこの季節だからであろう。笠松山は頂上を踏んだだけで、東側の展望台などにも一切立ち寄らず、九折越を目指す。250 mばかりの降下であるが、結構の上り下りがあるなと感じた。あとで、地図で調べると、途中に5つのピークがあった。この日の道は、鬱陶しいスズタケが伸び放題、蜘蛛の巣がたえずまとわりつくといった所が全体の7割程度あったような印象で、気持ちのよい山道は1割足らず。
九折越小屋に着くと、だれも居なかったが2人分のザックが置いてあった。少し、鹿の声が聞こえている。まずはコーヒーを淹れ、水場で洗っておいた米を火にかける。その後、濡れたシャツや靴下を、洗面器に貯まっている雨水で簡単に洗っていると、若い人が1人やってきた。昨日登り始めてから初めて人だ。坊主尾根を4人グループで登ってきたという。しばらくして、他の人達も到着する。4人組以外にも、彼らと行動を共にしたという単独行の1人がおり、合計6人での宿泊となる。それでも、小屋は十分すぎるくらい広い。炊きあがった飯を蒸らしている間に、傾山への道を確認し、5分ほど下った所にある水場へ水を汲みに行く。おいしい水が豊富に流れており、なにより嬉しい。頭も洗い、さっぱりして小屋に戻る。食事を済ませて、一番先にシュラフに潜り込む。夜中に起きると、昨夜と同様に下弦の月が出ていた。
2008. 09. 21 九折越から上畑まで |
コースタイム
0435 九折越小屋、0613 後傾、0630-40 傾山(本傾;1605 b)、0720 水場コース分岐、0727-47 昼寝、0858-0932 ブナの峠で昼食と道迷い、1018 水場コース合流、1041 三ッ尾、1150-1200 観音滝上の徒渉、1245 登山口駐車場、1310頃 車に便乗、1335-50 道の駅「原尻の滝」
この日はできれば上畑を10:42にでるバスに乗りたかった。そのあとのバスになると、もう1泊せねばならなくなる。しかし、昨日のペースを考えると、少し忙しすぎる感じだ。バスを諦め、タクシーを呼ぶことに決め、目覚ましも4:30に設定した。しかし、同室の人達が3時前からゴソゴソし始め、目が覚めてしまう。こちらは耳栓をしており、起きた人も話などは一切せず、大変気を遣っていたのだが、寝付けなくなってしまう。しばらく、ウトウトとしていたが、3:30には起きあがり、それではできればバスに乗ろうかと、出発の準備をする。4人が出発した後、祖母山まで行くという単独行の人と同時に小屋を出たのが4時半過ぎだった。
ランプは必要ではあるが、半月の明かりがあるので、周囲の状況がある程度わかる。宮之浦岳、前回の由布岳、扇ノ山などを歩いた時の漆黒の闇と比べると、格段に気楽である。1時間ほど歩いてからヘッドランプを消す。6時頃に日が出たようだが、山の陰になっていたのと、ガスがかかっていたので、はっきり分からなかった。かなり登ったかなと思う頃に、標高1500 mという標識が出てきて、まだ少しありますよと教えてくれる。6:13に後傾に達し、初めて傾山をしっかりと眺めることができた。祖母山は雲に隠れているが、本谷山、笠松山の稜線がおだやかな朝の光の中に浮かんでいる。展望は傾山に期待することにして、早々に谷を越えて傾山に向かう。しかし、傾山からの展望も今ひとつであった。本谷山にもすでに雲がかかりはじめている。南東の桑原山、木山内岳、大崩山方面が比較的スッキリと見えているが、その右手はほとんど雲の中になっている。
後傾から傾山を望む
暗かったためもあるが、ここまでの所要時間がコースタイム以上だったので、この時点でバスは断念し、プラプラと下りることに決める。それにしても眠い。7時間以上は寝ているのだが、山ではいつももっと寝ているので、睡眠不足なのだろう。下りはじめてすぐに大白谷コースという標識が出てくる。念のためザックから広域地図を取り出して、大白谷の方向で間違いないことを確認する。水場コースとの分岐点を過ぎて、坊主尾根の全景が見渡せる所があり、気持ちがよかったので、寝不足を解消しようと横になる。シャツの上から長袖をかけておいたのだが、そのうち風が吹き始め、寒くなって寝ておられなくなった。仕方なくふたたび歩き始める。すぐにロープが何本かかかっている急降下の道となるが、危ないことはなにもない。
それを終わるとごく普通の山道が続く。危険さがあまりにも強調されていたので、踏みあとも薄いのかと思っていたが、よく踏まれている。いくつかのピークは巻道になっており、ピークに上がらないまま通り過ぎるので、岩場歩きの能力などは全く必要ない。むしろ倒木などが多く、ルートを見つける能力が必要かもしれない。この日もママコナが多い。ヒメシャラの木も目に付く。一個所だけリンドウの花が30ほどもかたまって咲いている所があった。岩壁や真下に見える九折川の写真を撮ったりしながら歩く。ブナの木が何本かある峠で、パンとスープで昼食とする。小さなハエが沢山寄ってくる。そこを出発して、いくつかの赤テープを追っているうちに、道をはずしたらしく元の方角に向っている。上を見上げると、果たして先ほど休んだ所で見た木々がある。引き返すよりは、もう一度その地点からはじめた方がよいだろうと、斜面を登りきると、やはり休憩地点だった。20分のロスをしてしまった。
2度目は目を凝らしながら歩く。左手によじ登っていく赤テープを見落としていた。初めてGPSを取り出したが、五助山の時と同じく、電波をキャッチしない。周りになにもないピークに立ち寄ってみたが動かない。五助山のあと会社にメールして解決法を教えて貰ったのだが、それで問題解決したと思い、方法自体を忘れてしまっていた。さらに悪いことに、春に買ったばかりのコンパスも、前日から壊れてしまっている。下手すれば事故に結びつきかねない失態である。
頂上をでてから水場コースからの道と合流点まで、ロスタイムをすべて差し引いた実質歩行時間で2時間半かかった。コースタイムは1:30なので、少し信じられない位のたるみようである。空が暗くなってきた。三ッ尾の分岐点を過ぎたあたりで雨が降り出す。20分ほど下りた所で、3人のハイカーが休んでいた。「これから登りですか」と声をかけると、「雷も鳴ってきたので、ここから引き返そうと思っている」とのこと。「それほどの雨でもないのに少し惜しいな」とひそかに考える。通り過ぎるとすぐに追うように下りてきた。さらに20分ほどすると、篠つくような土砂降りになり、林の中は真っ暗で、道も分からないような状態になる。道を探していると、3人が追いついてくる。「引き返したのは正解でしたね」と話しかける。やがて林道にでる。合流点から林道までの所要時間は、コースタイムと同じだったので、調子が悪いわけではない。
すぐに観音滝の上にでる。ここも道が分からない。コースガイドをしっかりと頭に入れておけばよかったのであるが、ザックを開けて地図を取り出す気にもなれない。激しい雨で邪魔になり、はずしていた眼鏡を取り出して目を凝らすと、対岸にテープがぶら下がっているように見える。今の雨で沢は濁流となっており、岩の上を飛んで渡るのは危険である。しかし、少し上流で渡れそうなところがある。どうせ靴の中も水浸しなので、気が楽である。熊野本宮での失敗があるので、慎重に対岸に渡る。正しい道にでたらしい。少し進みはじめると3人が下りてきた。やはり、少し躊躇している。「ポールを持っていないのか」と大声で聞くと、「ザックに持っている」というが、取り出そうとはしない。先に渡った男性に細引きを投げ、それに女性の体を結わえて渡そうとしている。細引きもたるんだままで、心もとない。渡りきるまで見ていた。歩くのを止めて、Tシャツ1枚で雨の中に佇んでいるとさすがに寒くなってくる。
無事渡り終えたのを見届けて、歩きはじめる。断崖の脇に観音滝が姿を見せる。増水のため、ものすごい迫力である。これまでネットの写真で見た水量の数十倍はあろうかという勢いだ。上から下まで70mもあるらしいが、白い布を上から一直線に垂らしたような姿で、迫力はあっても味はない。大峰でカメラを濡らして買い換えたばかりなので、カメラを取り出さずに下る。駐車場までくると、3台ほどの車が止まっていた。東屋もあったが、着替えてもしかたないので、そのまま雨の中を歩き続ける。しばらくすると、雨があがり、日さえ照ってきた。スパッツやズボンの泥を洗い流して、乾かせながら歩いていると、後からきた車が止まってくれた。有り難いことに乗せてやるという。駐車場から20分程度の地点だったろうか。
座席が濡れると悪いので、ここで初めて雨具を取り出して、その上に座る。やっと雨具が役に立った。佐伯の人で、途中で右折する機会があったのに、「原尻の滝」という道の駅まで送ってくれた。そこの広いトイレを使わせて貰い、すべてを着替えて、仕事のときの姿に変身する。タクシーを呼んで緒方駅まで行く。緒方駅にはなにも食べる所がない。豊後竹田を見物する時間はなくなったが、切符があったので、竹田まで行ってしっかりとした昼食をすることにする。うまい具合に下り列車が遅れていたので、それに乗って竹田まで行く。驚いたことに、ここにも駅前にはなにもなかった。少し歩いた所にあった日帰り温泉のようなところで缶ビールだけ購入する。折り返しの車中で、残っていたものをつまみに喉を潤した。食事は大分駅までお預けとなった。