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2007. 06. 27 - 30 富良野岳、十勝岳、美瑛岳
 



あと2週間待てば、山麓のラベンダーも、山上の高山植物も最高になることは分かっていたが、混まないうちに行きたいという気持ちも強く、早めに設定した。花は思っていたより咲いており、悪天候で展望はほとんどなかったものの、満足できる山旅となった。

同行:単独

2007. 06 27 美瑛の丘、十勝岳温泉  

コースタイ

0648 芦屋、0800 神戸空港発、0955-1019 新千歳駅発、1257-1313 美瑛駅、1325 ケンとメリーの木、1350 セブンスターの木、1410 親子の木、1445-1601 美瑛駅、1618-31 上富良野駅、1716 十勝岳温泉

初日は、伊丹から千歳まで飛び、そこから旭川を経由して、十勝岳温泉に行くだけである。時間に余裕があったので、途中下車して美瑛の丘をレンタサイクルで走った。寸前に、ネットで少しジャガイモの花が咲き始めたと読み、期待が高まる。ママチャリでは疲れるという話もあったが、レンタサイクル屋が大丈夫というので、それにする。パッチワークの路を目指す。初めの丘の登りは少しきつかったが、押して上がるほどではない。広々とした景色は花がなくても十分満足できるものであった。ジャガイモ畑も一応見つけることができたが、やはり咲き始めということで、それほどの景観とは行かなかった。主なポイントを回って2時間足らずで駅に戻る。日も照らず、雨も降らず、ちょうどよかった。



美瑛のジャガイモ畑


上富良野からのバスはあちこちをめぐってから十勝岳温泉に行く。ちょうどガスがまいている境界が十勝岳温泉であった。山の方は見えない。温泉は、鉄の色が濃い湯と無色の湯の2種類がある。久しぶりの温泉である。



2007. 06. 28 富良野岳、上ホロカメットク山

コースタイ

0725 十勝岳温泉、0755 安政火口入口、0823 上ホロ分岐、0938-55 富良野岳分岐、1022-52 富良野岳(1912b)、1113-23 富良野岳分岐、1230-43 三峰山(1866b)、1328-33 上富良野岳(1893b)、1358-1402 上ホロカメットク山(1920b)、1420 上ホロ避難小屋

前日よりはすこし見晴らしがきき、なんとか稜線も見える。どこが見えているのかよくわからないが、富良野岳のツインピークは見えている。食事を一番ですませて、出発する。荷物は10kg程度であろうか、大きな負担にならない。

安政火口入口を過ぎて、登り始めると、ナナカマド、ウコンウツギ、蕾だけのイソツツジ、キバナシャクナゲなどが現れる。サンカヨウ、ゴゼンタチバナも少しだけ。小雨が降り始めたので、下だけ雨具をつける。上はTシャツのままで済ます。2時間ちょっとで富良野岳分岐に着き、休憩する。ザックを降ろしたところに、元気のないコマクサがあった。この旅で見た唯一本のコマクサである。富良野岳の方に登り始めると、次から次へと花があらわれる。イワウメ、エゾノハクサンイチゲ、チングルマ、エゾノツガザクラ、エゾコザクラ、キバナシャクナゲ、メアカンキンバイなどが群れをなしている。イチゲの白さは瑞々しい感じで、好感がもてる。エゾノツガザクラやエゾコザクラの赤紫色が、ガスの中で浮き上がり、最盛期はもっとすごいのであろうが、花の百名山に恥じないすばらしさである。

エゾハクサンイチゲとミヤマキンバイ エゾコザクラ



富良野岳の頂上に着いても見晴らしはきかない。ネットに、少し原始ヶ原の方に行ったお花畑が素晴らしいと出ていたので、そのような雰囲気ではなかったが一応行ってみる。やはり、ハクサンイチゲ、キバナシャクナゲ以外の花はほとんどない。多少歩く人が少ないのであろう、ハイマツが道を覆っていたので、ズボンが完全にぬれてしまい、骨折り損という感じであった。ただ、ここで時間をとったので、頂上に戻ったときにガスが切れ、十勝岳や美瑛岳の姿を始めて(そして最後でもあった)見ることができた。目をこらしていると、旭岳方面が左手に、ベベツらしきものが美瑛と美瑛富士の間に見えているようである。十勝岳温泉もすぐそこに見える。700bしか登っていないので当然であるが。



富良野岳より大雪山、美瑛富士、十勝岳


もう一度、お花畑の間を分岐点までもどる。朝同時に出発した夫婦と途中ですれ違う。今日は上ホロ小屋までと言うと、「勿体ない、美瑛小屋まで十分行ける、そうすれば明日はオプタテシケに登ることもできる」と二人揃ってけしかけてくる。分岐に戻って、地図を広げ、コースタイムを調べると、あと7時間半は必要である。すでに11時を回っているので、明るい内に着くことができるかもしれないが、あまりに余裕がないのも面白くない。やはり予定は変えないでおくことにする。少し強い雨が降ってきたので、すぐに出発する。

左の方からかなり吹き付けてくるので、左耳を抑えながら、顔を右向けて、花に見とれながら歩いていると、知らない間にコースを外していた。5分ほどロスして、コースに戻る。しばらくするとキタキツネとのご対面である。全然逃げようとしないで、こちらを見ている。4枚ほど写真をとらせてもらう。姿は見えないが、ナキウサギの声も聞こえる。このころ、雨は小雨になっている。ウコンウツギ、エゾツガザクラが目立ち、チングルマ、キバナシャクナゲも多い。そのうち、始めてミネズオウが現れる。

1時間ちょっとで三峰山の中央峰に着く。大して歩いていないし、展望もないが、時間を持て余しそうなので、小休止する。そこを出てすぐの所に、かなりの花が咲き乱れている所があり、休憩場所をまちがったと悔やむ。エゾツガザクラ、チングルマ、エゾコザクラ。ここでハクサンチドリを一本だけ見つける。ショウジョウバカマが数本あったが、これまで本州で見ていたのと違う青紫色で、なにか気持ちが落ち着かない。ここ以外でも、3個所ほどで見たが、いずれも同じ色だった。そのあとも、イワウメ、ツガザクラ、ミネズオウ、メアカンキンバイ、キバナシャクナゲなどが、ガスの中に次々と出てくる。展望はないものの、涼しいので大変気持ちがよい。上富良野岳、上ホロカメットク山なども、視界が悪いので、下り道を見つけるのに、少し手間取ったりするが、上ホロ小屋に無事到着する。温泉を出て、7時間程度の行程であった。山が見えているともっと時間をとったに違いないが、それでも花の写真をとりながら、ゆったりと歩くことができた。

小屋には誰もいない。手持ちの水で食事を作ることは可能であるが、翌日分が足りないので、雪渓を見に行く。少し降りたが、全く水にありつけそうにないので、雪を融かすことにする。ポリ袋に雪を入れて、小屋に戻り、食事を作る片手間に水を作る。食後、暗くなると同時に寝てしまう。23:30頃、トイレに行くが、少し明るい。尖った上ホロの頂上を始めて見ることができた。随分と高い所にあるなという印象だ。頂上直下から長大な雪渓が延びてきており、それが先ほど雪をとったところを経て、うんと下まで続いていることが分かった。雲の中に月が一、二度見えたが、すぐに消えてしまう。



2007. 06. 29 十勝岳、美瑛岳、美瑛富士、ベベツ岳

コースタイ

0555-0645 雪渓へ水汲み、0705 上ホロ避難小屋、0749-0810 十勝岳(2077b)、0906 最低鞍部、0930-52 尾根に出て休憩、1033-36 美瑛岳分岐、1052 美瑛岳(2052b)、1142-48 美瑛富士分岐、1207-10 美瑛富士(1888b)、1305-1431 美瑛避難小屋、1530-38 ベベツ岳(1860b)、1625 美瑛避難小屋

5時前に起きる。またガスであるが、分岐点の道標が見えるので、前日の夕方よりは多少ましだ。外気温度は9℃で、寒くはない。昨夜見たのと同じように、上ホロの頂上が一瞬ガスの中から顔を出したが、写真を撮る間もなく、消えてしまった。今日も時間があり余るくらいあるので、朝食をすませたあと、きれいな水が得られるかどうかを試すため、雪渓を下ってみる。往復で50分使ったが、とうとう水の音を聞くこともなく引き返した。下る時に気がつかなかった結構大きな支流もあり、コンパスで慎重に方向を見定めながら戻る。小屋の周りには、イワウメ、メアカンキンバイというおなじみに加え、ミヤマクロスゲ、イワブクロの蕾などの新参者もある。

7時過ぎに小屋を出る。今日は昨日とは逆に右側から霧が吹き付ける。手で押さえるのも面倒なので、小石を耳につめて問題を解消する。右側からだと、火山ガスを吸う心配がないので気が楽である。荒々しい火口を覗き込むという楽しみもないまま、45分で十勝岳の頂上に立つ。何の展望もないし、誰もいない。少し休んでいると、ドーン、ドーンという音が響く。火山活動の音とは思ったが、万一雷だとすると、大変危ない所にいることになるので、早々に下り始める。

見える限りのところはすべて砂礫というなだらかな下りを随分と歩く。所々白いのは、雪ではなく粘土であった。要所、要所にポールが立っているので、迷う心配はない。周囲が見えないというのもかえって趣があり、とても楽しい散歩道である。頂上から50分ほどでやっと花が復活した。最初はメアカンキンバイ、ミヤマクロスゲ、イワブクロ。そのうち、コメバツガザクラ(初出)、イワウメ、ミネズオウ(かなり赤色が濃い)などが。すぐに最低鞍部になり、徐々に登り始める。

やがて、巻道の登りから尾根に出る。やっと風下側で雨風を避ける場所を見つけることができたので、最初の昼食を少し腹に詰める。休んでいるとすぐ目の前にイワヒゲのごくごく小さな蕾があった。ナキウサギの声がたえず聞こえる。歩き始めると、イワウメ、ハクサンイチゲ、メアカンキンバイ、ミネズオウ、キバナシャクナゲ。やがてイワウメ一色に染まる斜面をくだる。段々畑の端のような所に咲いているので、下りながら見ると、点々と咲いているのであるが、振り向くと斜面一面に咲いているように見える。5分以上、このような光景が続く様は圧巻であった。




一面のイワウメ


やがて、美瑛岳への分岐点に着く。荷物を置いて、サブザックだけで登る。今日は朝から、Tシャツの上から雨具をつけていたが、ここで始めて頭にフードをかぶる。これまで気がつかなかったが、かなりの雨が降っていることを音で知る。頂上までの道も花が続くので悪くないが、頂上は写真を撮っただけで引き返す。次の美瑛富士でも同じような感じである。昭文社のマップには登り50分とあるが、実際には20分で登る。いくら荷物を持っていても、50分はかかるまい。キバナシャクナゲ、ミネズオウ、イワウメの三色トリオがここでも健在。それにハクサンイチゲの瑞々しい白色が目を引きつける。雨のせいもあるのだろう。普段はそれほど魅力的な花ではないが、ここは特別である。

ここを出ると避難小屋は近い。これまで見なかったミツバオウレンや名前のわからない黄色の花を見ながら、最後の雪渓を渡る。5分程度もある広い雪渓で、見通しが悪く足跡も分からなかったが、ほぼ真横に横切ると対岸の目印が見えた。13時過ぎに小屋に着く。出発して6時間であった。小屋には6人の団体客が先着していた。この日の山中では誰にも出会わなかったので、24時間ぶりの人間との再会となった。にぎやかに食事をしていたが、こちらもバーナーを使って、スープを作り、餅その他を入れて、昼食とする。ここは、小屋のすぐ前には、細々としているものの、きれいな水が流れており、それだけで豊かな気持ちになれる。

6人は食事を終えると、寝袋に入ったりしていたが、こちらは時間を持て余しそうだったので、明日行くつもりだったベベツまで散歩に出かける。石垣山に向かって登り、やがて東の山腹を巻くようにしてベベツ岳に向かう。ここも花は豊富である。チングルマ、エゾノツガザクラ、キバナシャクナゲ、イワウメ、ミツバオウレン、それに1本ずつであるが、ヨツバシオガマ、コイワカガミ、ミヤマキンバイ、セリ科の白い花があった。頂上には1時間で着いた。帰り道で、突然前からナキウサギが飛び出してきて、靴の上を通って、駆け抜けて行った。ゆっくり見る間もなかったが、間違いなくナキウサギであった。

石垣山にも立ち寄るつもりでいたが、下を見て歩いているうちに、知らない間にかなり下りすぎてしまった。小屋に着いて、コーヒーを沸かし、日記を整理する。夕食はビーフンを作る。乾燥野菜をもどしておいたものとコーンビーフの肉を油で炒めようとすると、大きなはじけるような音がした。6人グループが驚いて、どんなメニューですかと聞いてきた。19:30になって、ウィスキーがなくなっても、女性3人の話に終わりがないようだったので、「そろそろ寝たいのだけど」と声をかけると、すぐにやめてくれた。


2007. 06. 30  石垣山

コースタイ

0550 美瑛避難小屋、0618 石垣山(1822b)、0650-0725 美瑛避難小屋、0905-35 天然庭園、1050 登山口(駐車場)、1140-1307 白金温泉、1338-50 美瑛駅、1424-30 旭川、1646-1855 新千歳空港、2045 神戸空港

何時まで寝ていてもよかったのであるが、3時半頃から相客が活動を始めたので、起きてしまう。「天気はどうですか」と聞くと、「かなり明るいですよ」との声が返ってくる。確かに下の方はかなり明るい。しかし、上はやはりガスの中である。ここはトイレがないので、仕方なく外で用をすませる。チングルマを目の前にし、ナキウサギの声を聞きながらの用足しは気分がよいが、やはり昔とは変わってきたのであろう、なにか悪いことをしているように思ってしまう。

時間を計算してみる。白金温泉で温泉に入り、ビールを飲んで、昼食をする時間を考えても、昨日の石垣山に行くことができそうである。上ホロまで行くというグループとほぼ同じ頃、サブザックに雨具だけを入れ、Tシャツ1枚で出かける。この3日間、普通はシャツ1枚、雨が降ると、その上にゴアの雨具というスタイルで過ごせた。休憩後に立ち上がったとき、少し寒いと思ったことはあったが、汗をかくということは全くなかった。途中で、コンパスを置き忘れたことに気がつく。ガスの中を、道がない岩の上やハイマツの中を歩くとすると、忘れてきたのは致命的な失敗である。巻道が終わり、少し下り始めた所で、右手に雪渓がある。これを目印にできるかなと思い、そろそろ道から外れようかと考えていると、それらしき道が見える。昨日は気がつかなかったが、間違いなく石垣山を目指していそうである。やがて、大きな岩の塊が出てくる。これも目印になるなと思って登って見ると、どうも頂上らしい。なんの標識もないが、周りは一段と低くなっている。そう言えば、この岩の塊を石垣と言えなくもないなと合点して下る。登山道まではすぐだった。

小屋でもう一度コーヒーを飲み、掃除、記帳を済ませて、下山にかかる。雪渓や水場をいくつも通り過ぎたので、この時期なら、こちらに下りてきても簡単に水が手に入るようである。少しガスが切れており、雪渓の向こうにオプタテシケ方面が望める。地図に岩や木の根で歩きにくい道と紹介されていたが、そのためではなくて「ぬかるみ」のため歩きにくかった。傾斜がなくても余程注意しないと滑ってしまうので、小1時間ほどはかなり神経を使った。しかし、上から落ちてきたナナカマドの細かい花びらをまき散らした真っ黒の泥土は何とも言えない味わいがあった。




オプタテシケ方面


朝早く駐車場から歩き始めたらしい2組のグループとすれ違う。花の種類も少しずつ変化していくのが面白い。ミツバオウレンはなおも続く。ナナカマド、ウコンウツギも。この他、サンカヨウ、サラサドウダン、マイヅルソウ、エゾイソツツジ、ゴゼンタチバナなどをたまに見かける。1時間も歩くと、エゾマツなどの針葉樹が出てくる。天然庭園という地名があったので、そこで昼食をと考えていたが、庭園という雰囲気はなかった。多分空から見下ろすと庭園のように見えるのであろう。いずれにせよ、そこでバーナーを取り出して、昼食をつくる。薄日もさしているので、濡れた雨具を広げる。

食事を済ませて出発すると、木の幹に熊のものと思われる引っ掻き傷があった。気のせいか獣の臭いもする。キタキツネやナキウサギを見たので、ヒグマも見てみたいと思っていた。知床の宿の女中さんから、「出会えば、じっと目を見つめ合うとよい。決して怖いことはない」と聞いてので、一度は出会いたいものと思っていた。しかし思わず、鈴の音を一段と高くして歩いていた。ムシカリ(オオカメノキ)やムラサキヤシオがあらわれて、植生が変わったなと思うと、目の下では花を付けたマイヅルソウが増えてきた。ムシカリの装飾花があちこちに落ちている。目を見張るような純白である。また霧雨が降ってきた。

道が広くなるにつれて、下界の草花へと変化していき、舗装道路の脇にはコウリンタンポポの朱色が存在を強調していた。道ばたにルピナスが咲いている。それほど好きな花ではないが、自然の中にあるものは悪くない。舗装道路では白金温泉への道案内がなく、交差点に来るたびに、立ち止まってコンパスで確認しなければならなかった。ほとんどの人が車を使うためであろうか。国民保養センターで風呂に入る。着替えをして、BS近くの食堂でビールと昼食を頼み、ほとんど待ち時間なしで美瑛行きのバスに乗る。白金温泉街はなんの変哲もない所であったが、バスから見る白樺林が続くさまは、なかなかよい雰囲気であった。

(付記)昭文社のコースタイムは少し改訂する必要がありそうである。上ホロ避難小屋-十勝岳=1:20が実際は0:44、美瑛富士分岐-美瑛富士=0:50が空身とはいえ0:20、美瑛富士避難小屋-美瑛富士登山口=2:40が実際には2:55、登山口-白金温泉BS=1:40が0:50とかなりのバラツキがあった。


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