2007. 2. 8 沼津アルプス
東京からの帰りに三島に泊まり、沼津アルプスを縦走する。これは新幹線から見ると、ポコポコと小山がいくつも連なっており、列車の進行とともに、次々と形を変えるので、以前から興味を持っていた。もちろん、歩くことにより山座同定がしっかりしたものになるという期待もある。
同行: 単独
コースタイム
719 原木(バラキ)駅、934 登山口、750 茶臼岳(128)、812-821 大嵐山(日守山;191)、902 分岐、936-938 大平山(356)、946 多比口峠、1009 多比峠、1020-1043 鷲頭山(392)、1050-1055 小鷲頭山(〜320)、1109 志下峠、1118 馬込峠、1124-1134 志下山(282)、1142 志下坂峠、1209-1213 徳倉山(256)、1230 横山峠、1246-1255 横山(182)、1308 八重坂峠、1336 桜台、1341 香貫山(カヌキ;193)、1345-1400 展望台、1410-1413 香陵台、1420 黒瀬BS、1454 沼津駅
変わった読みをする駅で下車。このあと大平山もオオベラヤマと変わったフリガナがしてあったが、これらは単に地元の読み方と考えてよいのであろう。とにかく、名前を確認しただけで9つの山、7つの峠を縫って歩くので忙しいことこの上ない。あいにくと富士山は顔を出さないが、それでもなかなか楽しい道である。ネットで見ても、ここから沼津まで縦走する人はほとんどいない。
ウメの花のある住宅街をぬけ、狩野川にかかる石室橋を渡って左折し、尾根が付きだしているところから登り始める。小さな標識がなければ、とても分からないような入口である。もうヒメオドリコソウが咲いている。しばらくは右うしろ、左うしろからラッシュ時の車の音を聞きながら、笹の生い茂った山道を行く。最近整備されたものらしいが、刈払いしていないなら大変歩きづらい尾根であったろう。大嵐山は柵を乗り越えないと入れず、出られずという奇妙なところである。悪いなりに展望は楽しめる。これから歩く大平山から徳倉山への展望もある。
ヒノキ、アオキなどが多い広葉樹林帯の尾根をたどる。ツバキの花もかなりある。そろそろ車の音がなくなったかなと思う頃、前方より削岩機の音が聞こえてくる。団地造成のためのものらしい。静岡の山に来たのに、なかなか静かな岡とならない。大平山に来れば大勢の人に出会うのかと思っていたが、そうでもない。大平山はどこから見てもピラミダルでなかなかよい。この日はやはり景色がよいためであろう、計7個所で立ち止まって休憩するという、いつもに比べると、かなりゆったりとしたペースで歩いたのであるが、大平山の頂上そのものは取り立てるほどのものでないので、すぐに通り過ぎる。多比口峠に下りる直前に5人ほどのグループとすれ違ったのが初めての人達で、その後徳倉山の手前で4人、頂上で20人近い大所帯の計3グループと会った。
このあとは、真下の沼津の街の音が聞こえ始める志下山までは静かな道となる。ウバメガシの林が続く。幹はコナラと似ているが、やはり同族らしい。鷲頭山に来ると初めて駿河湾が見える。富士・箱根は無理であるが、達磨山方面はうっすらと見える。気持ちがよいのでベンチに座り、昼食とする。珍しくサンドウィッチを買ってきたが、抵抗なく腹に収まっていく。小鷲頭山まで下りると前方にまた素晴らしい景色が広がり、思わずまた足を止める。振り返ると鷲頭山がこんなに下りたのかと思うほどの高さにある。ここには平重衡の切腹の場という猫の額のような場所が縄で囲われている。彼が木津川で処刑されたことは史実であろうから、少しやりすぎの感もある。もう少し下ると、南都勢力による追求を逃れて、隠れ住んだという岩屋が出てくる。これも、いかにもそれらしき風情であるが、こちらも史実ではないのであろう。よほど人気のある武将だったことを示している。
つぎの志下山も沼津方面の景色がよい。トンビが6羽、頭上あるいは眼下を漂っていて、ゆったりとした気分になる。徳倉山もよい展望である。大勢の団体がにぎやかに昼食をしていたので、周りを見渡すだけにする。ここから大平山と鷲頭山の間に葛城山が見えた。横山峠は、通り抜けていた冷たい風が印象的であった。横山、八重坂峠、桜台、香貫山を経て、展望台へ。ここでまた展望を楽しむ。地元の老人がいたので、沼津のビルや塔、三島方面、東海大学などを確認する。香稜台で牧水の歌碑を見る。「香貫山いただきに来て吾子とあそび ひさしくをれば富士はれにけり」というものである。いい味の詩である。
鷲津山遠望
バス道に下り立ったが、時間があったのでバスをやめて沼津駅まで歩く。日枝神社に立ち寄り紅白の梅を楽しむ。沼津の名物という干物を売っている魚屋が途中にあったので、いくつか買っていく。丁寧に包んでくれて氷まで入れてくれる。今朝開いたばかりで、天日干しだと言っていたが、たしかに生の魚に近い味がした。予定より早く着いたので、三島に戻って新幹線に乗るよりは、沿線を眺めながら静岡辺りまで行く方に興味が行き、丁度来た電車に飛び乗った。吉原まで来たとき、三島のコインロッカーに荷物を預けていたのを思い出し、慌てて引き返す。
沼津アルプスは確かに素晴らしいハイキングコースだったが、ロープ、鎖、目印のペンキ、標識、階段などが多すぎて、過保護の印象が強い。奥沼津アルプスにあったベテランコースという部分も、アルミ梯子や虎ロープがベタベタとあり、まるで「日の丸、おもちゃ付きのお子様ランチ」コースのようであった。熱意は分かるのであるが…。