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2006. 09. 08-11
  聖岳・赤石岳・荒川岳


聖岳(日本の最南端にある3000 m峰)、赤石岳(日本の一等三角点の最高峰)、荒川前岳(いつなくなるか分からない3068 m)、悪沢岳(南ア南部の最高峰)を山小屋に泊まりながら巡る旅。

同行: 単独

 

2006. 09. 08 聖平小屋まで

コースタイ

1240 聖岳登山口、1342 聖沢吊橋、1426-38 標識のある広場、1625-35 滝が見える見晴台、1733 聖平小屋

JRの始発に乗り、静岡から08:15のバスで畑薙へ、そこからフォレストバスで登山口へ。バスの中で昼食を済ませる。他にも8人の登山客がいたが、食事をしている人はいない。聖の登山口で下りたのは一人だけ。畑薙で入手し、記入しておいた登山カードをポストに放り込んで、すぐに歩き始める。

途中バスの中で薄日も射したが、歩き始めるとパラパラときた。暑いのだけはごめんなので、むしろ有り難い。はじめは杉の植林の中の急坂であるが、40分ほどで緩やかになる。林を出るところで、下だけ雨具をつけ、上はTシャツだけで濡れながら行くことにする。オカトラノオが咲いている。吊橋から40分ほど歩いたところで、広場のような場所につき、一息入れる。小屋まであと2:40と標識があり、暗くなる前に着けるなと安心する。エゾシオガマやトリカブトが出はじめる。15:20にこの日唯一の人とすれ違う。下には駐車場もないし、バスもないので、今日は誰にも会わないだろうと予想していたので驚いた。椹島ロッジに泊まるとのことで納得した。

少し大きめの沢を渡るところで、道を見失って10分ほどロスする。17時近くになり、そろそろ近づいたかなと思っていたら、あと1:20との標識があり、少し焦ってしまう。カイタカラコウ?、タカネナデシコ、ミソガワソウを見ながら、実際は40分ほどで到着した。薄明るい広場で、皆さんがゆっくりとくつろいでいる所であった。小屋では夕食も始まっている。18:00より一人だけ遅れての食事となった。食堂に、頂上までの最速記録が書いてあったが、男性43分、女性56分とか。色々な人がいるものである。他の人は結構狭いところに詰め込まれていたのに、遅く着いたためか一人だけ別の区画に入れられ、個室を与えられたような気分であった。




聖沢吊り橋


トラノオとミソガワソウ



2006.09.09 聖平小屋から百間洞山の家まで

コースタイ

0503 聖平小屋、0524 薊平、0607-12 小聖岳、0712-27 聖岳(3013b)、0744-50 奥聖岳(2982b)、0803-20 聖岳、0920-42 休憩、1046-1117 兎岳(2816b)、1200-03 小兎岳(2738b)、1256-1312 中盛丸山(2807b)、1348-55 大沢岳(2819b)、1435 百間洞山の家

朝食は4:30からと早い。薄暗いけれども、ヘッドランプがなくてもなんとか歩ける。広河内への道を分ける。薊平へ登る道、小聖を越えてからの道の高山植物は、期待以上の多さであった。ピンクのセンジョウアザミ?、ウメバチソウ、オヤマリンドウ、トラノオ、トリカブト、マツムシソウ、メタカラコウ、枯れたマルバダケブキ、ミヤマシオガマ、トウヤクリンドウ、イワキキョウ?、タカネビランジ、イワツメクサなどなど。軽装の人が3人ほど抜いていった。見通しのない中、聖岳の頂上に着く。ひょっとしたら、しばらくするうちに晴れるかもしれないし、時間の余裕もありそうだったので、奥聖を往復する。これはよかった。途中にかなりの花の群落があった。ウサギギク、チングルマの実、オンタデ、ガンコウラン、タカネヤハズハハコ、キオンなど。チングルマの実に露がついて実にみずみずしい。奥聖ではホシガラスを見る。




ウサギギク、チングルマ、オンタデ、キオン、タカネヤハズハハコ(奥聖手前で)



前聖に戻ると、ピストンと思われる大勢の人が頂上に着いており、にぎやかな雰囲気になっていたが、依然として展望はない。諦めて、兎岳の方へと足を踏み出す。10分ほどすると日が射しはじめる。虹も出ているが、七色でなく、全体が白い色をしている。ブロッケンも久しぶりに拝む。タカネシオガマがある。ネットで似た経験をした人の話を読んでいたのに、尾根をまっすぐに進んで、道を見失い、10分ほどロスをする。一時間歩いてとくに休む理由もなかったのであるが、コルも近いかと休憩し、行動食を頬張りながら、現在地をGPSで調べる。距離的には聖と兎の丁度中間点の2688 b付近らしい。迂闊にも電池がほぼなくなっており、GPSが役立ったのは、ここだけだった。そうこうするうちに、周りのガスが途切れて、聖も一瞬顔を出し、行く手の兎岳も目の前に驚くような近さに、驚くような高さで聳えているのが見えた。よいタイミングで休んだことになる。コルからは急な登りであったが、時間的にはたいしたことなく、1時間ほどで兎岳に達する。

頂上のすぐ手前で、マツムシソウ、タカネナデシコ、オヤマリンドウなどの花畑が広がる斜面があった。兎岳の頂上からは、小盛丸山、大沢岳、赤石岳もはっきりと見え、荒川岳もなんとか見える。また行動食を少し取っていると、反対側からの登山者が上がってきた。聖岳のあとで出会った唯一の人である。小兎岳、中盛丸山とアップダウンを繰り返すが、稜線を吹き抜ける涼風が心地よい。コルから見上げる中盛丸山は、八ヶ岳の赤岳のようで、なかなかよい恰好である。イワインチン、トウヤクリンドウ、アザミ、ウスユキソウなどが次々と現れる。

中盛丸山の頂上でも、時間があるのでハイマツに寝ころんで、ヨーカンを食べる。大沢岳にも登っておく。分岐点に荷物を置いて、空身で登るが、途中で百間洞小屋がかなり先に見えた。見晴らしはよくなかったが、岩がゴロゴロしている少し違った印象の頂上なので、登っておいてよかった。デポ地点に戻ってから百間洞小屋へ行く道も、ハクサンフウロ、キオン、シシウド、トリカブトなどが多く、楽しいトラバース道であった。小屋前の机で、缶ビールを飲みながら、同じ頃に着いた人としゃべり、データの整理をする。18時になるとほとんどの人はシュラフに入って静かになってしまう。




小兎岳から赤石岳


2006. 09. 10 百間洞山の家から千枚小屋まで

コースタイ

0516 百間洞山の家、0630-36 小ピーク、0740-55 赤石岳(3120b)、0819-22 小赤石岳(3081)、0905-09 大聖寺平、0940-57 荒川小屋、1110-17 三叉路、1121-25 荒川前岳(3068b)、1139 荒川中岳(3083b)、1249-1340 悪沢岳(3141b)、1410 丸山(3032b)、1444-1500 千枚岳(2880b)、1534 千枚小屋

この日のコースタイムは長いのに、朝食は5時と遅いので、早く食べ始めるようにした。出発前に、小屋の近くの聖岳展望台で、はじめて聖の全貌を眺める。奥聖が前聖に負けないくらいの存在感がある。百間平に出る頃、朝日が射しはじめ、今回の山行ではじめての豪快な展望が広がり始める。恵那山、中ア、御嶽、荒川前岳、仙丈岳、塩見岳など。そのうち悪沢岳も。赤石に近づくにつれ、意外にきつくないので、休みなしでも登れるかなという気がした。しかし、小ピークからの展望がよく、時間も手頃なので、一息入れる。しばらくして目に入った富士山は予想よりかなり大きい。50 kmの近さなので、当然かもしれない。

そのあと1時間で赤石岳頂上。誰もいない。風がきついので、長袖シャツを着る。持参した佐古さんの山岳展望ハンドブックを広げて、対応させる。この本にははっきり書かれていない奥秩父も今日は明確な稜線を完全にくっきりと見せてくれている。南の方向が必ずしも100%でないのが、少し残念である。知らない間に一人二人と増え、小屋で同宿だった夫婦連れも上がってきた。デジカメの電池が残り少ないという警告がでていたので、いつもの360°パノラマは諦めて、数枚だけにしておく(実際はそんなことなく、最後までもったので、惜しいことをした)。結果論であるが、千枚小屋には十分の余裕をもって到着できたので、ここでもっとゆっくりすればよかった。先は長いという先入観が強く、15分で頂上をあとにする。




赤石岳山頂から二児山、仙丈ヶ岳、荒川前岳(塩見岳)、荒川中岳(甲斐駒ヶ岳)、
間ノ岳、西農鳥岳、農鳥岳、悪沢岳



赤石小屋への分岐、小赤石を越え、大聖寺平で長袖シャツを脱ぐ。やがて、この日初めての人とすれ違う。千枚小屋からという。やがて荒川小屋。小屋の人に水場を聞いて、入れ替えに行くが、5分近く下る。量は十分間に合っていたが、フレッシュな水を飲みたかっただけなので、わざわざ行く必要はなかった。小屋の人と色々話をしながら、弁当のおむすびを食べる。昨日のバカでかい1個だけのおむすびと違って、食べやすいサイズで、味もよいので有り難い。出発しようとすると、例の夫婦が到着した。登り道には、マツムシソウ、イワインチン、ウメバチソウ、シラネニンジン、ウスユキソウが咲き、花の写真を撮るために来ている人もいる。小屋から前岳までは460 bの登りなので、この日一番の高度差である。しかし、花が多いので、退屈しない。雲が早く流れるようになってくる。ハイマツのなかの雷鳥の声を幾度も聞いた。余り多いので気のせいかと、あとで小屋の人に確かめたが、「北とちがって、南は多いので、全部そうだろう」という答だった。ハクサンイチゲ、マツムシソウ、オヤマリンドウ、トウヤクリンドウ、ニガナ、ウメバチソウ、黄橙色の5弁の鮮やかな花。

三叉路に出て、荷物を置いて前岳に行く。西側の斜面が豪快に崩れており、3068 mの頂上がなくなるのも遠くないという風情であった。前岳から戻ると、例の夫婦がやってきた。是非前岳に行くとよいと勧める。中岳を越えたところで、人とすれ違うが、椹島からにしてはおかしいので「どちらから?」と聞くと、二軒小屋からという。そのようなこともできるのかと納得する。悪沢とのコルでは両側の沢がきれいで、思わず立ち止まる。マツムシソウ、トリカブト、タカネナデシコ、ヤマハハコ、ミヤマシオガマ、オヤマリンドウなどが次々とあらわれる。悪沢の前半の急な登りが終わると塩見岳などが見える。頂上からの方がよいだろうと写真を撮らなかったが、その後は悪くなる一方で、チャンスを逃してしまった。

悪沢頂上に着き、ザックを下ろす際に、右腕に擦り傷を作ってしまう。あとは下るだけなので、しばらく頂上にとどまり、雲の流れを見ながら、北と南の景観をウォッチし続ける。鳳凰方面、大無間方面が確認できたものの、ほとんど好転しなかった。下りはのんびりと、丸山を過ぎてから次々とあらわれるホシガラス、イワインチン、タカネナデシコ、トリカブト、マツムシソウ、センブリなどを楽しむ。




ミヤマゼンコ、マツムシソウ、イワインチン(悪沢岳、千枚岳の中間で)


千枚岳でまた休む。ここから天城山が確認できた。千枚岳から15分でダケカンバがあらわれ、とうとう高山帯ともお別れとなる。オトギリソウ、ズダヤクシュ、カニコウモリ、薄い色のトリカブトと花も違ったものになってくる。

千枚小屋では、小屋の前の机に陣取り、ビールを飲む。富士山を目の前にしながら、高山植物愛好家のおばさんと、この日に見た花の種類を確認する。小屋の周りにはヤナギラン。ここの小屋の番人は植物のこともよく知っており、話が弾む。好きに寝てよいと言ったので、誰もいない二階に上がり、大部屋を独占して寝る。3時頃に目を覚ますと、富士の両側で稲妻が盛んに光っており、豪快そのものだった。15分ほど飽きずに眺め、写真も撮ってみたが、バカチョンには何も写っていなかった。



2006. 09. 11 千枚小屋から椹島ロッジまで

コースタイ

0530 千枚小屋、0620-30 展望台、0900 椹島ロッジ 1000(フォレストバス)、1100 畑薙ロッジ、1434(井川線)、1753-1814 静岡駅(ひかり)、1959 新大阪

この日は下山するだけで、ゆっくりと出発すればよいと考えていた。ところが、話をしているうちに、10:00のフォレストバスに乗らないと静鉄バスへの連絡がないということが分かり、少し慌てる。インターネットで丁寧に調べたつもりだったのに、ミスがあったらしい。ほとんどの人が出発したあとで、小屋を出るが、かなり激しくなっていた雨が小降りになっており、雨具なしで出発できたので、却って好都合だった。赤石から悪沢までの尾根が展望できるところがあり、カメラを構えると、丁度そこが展望台の登り口になっていた。上にいた先発の人が声をかけてくれなければ分からずに通り過ぎたかもしれない。前日の全コースが、千枚も含めてほぼ全部見える最高の展望台だった。すでに先ほどの雨はすっかりやみ、山全体が朝日に照らされている。



展望台から見た赤石岳〜荒川小屋間の稜線

そのあとの中間点付近にきれいな清水があると聞いていたので楽しみにしていたが、気づかずに通り過ぎてしまった。25000分の1の地形図と異なるルートに変更されたらしく、途中で思いもかけない登りを強いられて、送電鉄塔のあるところ(1437b)に出る。

林道に出たあと少し右に行くと、椹島ロッジだ。バスの整理券をもらい、時間があったので川原にでて、清流で頭と足を洗い、体をタオルで拭き、汚れた靴下を洗う。バスは畑薙で乗り継ぐが、乗り継ぎ時間はあり余るほどだ。

畑薙には静岡市の経営する白樺荘があり、無料で温泉に入ることができる。温泉に2度入り、食事をして静鉄バスが来るまでの3時間を過ごした。イオウの臭いが微かにする重曹泉で、わざわざ静岡市中心地から通ってくるという老人も入っていた。看板に火曜日は定休日と書いてあった。一日ずれていたら雨の中で3時間をどう過ごせばよかったのだろう。



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