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東北新幹線からの山岳展望


これは『新ハイキング』20064月号〜10月号に掲載された記事に手を加えたものです。



「新幹線から山座同定を楽しむ」を読んで      船水康宏


富田彰さんの連載「東北新幹線から山岳展望を楽しむ」を毎月楽しく拝見しました。次号にはどんな山が登場するのか、わくわくしながら新ハイ誌が届くのを毎月心待ちにしていました。本文とスケッチに登場する山の数は大変なもので、東北新幹線から見える山で名前が分かった山は430以上もあるとのこと。よくぞこれだけの山の名前を同定できたと、ただただ感服しました。

私も、東北新幹線を利用する機会が多く、車窓から山を眺めるのが大好きです。いかに山の名前を知らないかを痛感するとともに、間違って覚えている山の名前がかなりあることを今回教えられました。一例ですが、矢板市付近から高原山を眺めると主峰である釈迦ヶ岳の右の方に大きな峰が2つ見えます。これは、剣ヶ峰と前黒山とばかり思っていました。ところが、いずれも無名峰で、この2つの山は東北新幹線からは眺めるのが大変難しいことを知りました。筆者は実際にこの辺りの山に登ってそのことを現地で確認されていることが、すごいと思います。大佐飛山、仙台市内からの船形山、焼石岳の山頂を東北新幹線から確認することが難しいこともよく分かりました。福島県国見からの阿武隈山系、仙台からの牡鹿半島と金華山、宮城県吉田川辺りからの七ッ森、くりこま高原駅辺りからの奥羽山脈と東の山々、北上市からの毒ヶ森山塊など、スケッチと説明で初めて目にする山名が多く、とても勉強になるとともに山座同定の奥深さも感じることができました。

東北新幹線沿線で登った山は230を超えるとのことで、脚で稼がれた実地の知識が説得力のある山座同定の背景になっていることを行間に感じ取ることができました。

さらに、こうした山の名前がただ単に羅列に終わるのではなく、その山にまつわる逸話や地学的あるいは地形的な特徴等の解説が随所にちりばめられており、よりいっそう内容を豊かにし、読者の興味を惹き付けているのではないでしょうか。焼石連峰の駒ヶ岳が谷文
晁の『日本名山図会』に登場すること等たくさんのことを初めて知りました。

補足というと大変におこがましいのですが、ちょっとだけ私の体験を述べさせていただくことをお許し下さい。

まず、古川駅付近から、深田百名山の一つで山形の名峰月山を望むことができることです。東北新幹線からの月山とは意外に思われる方が多いかと思いますが、百聞は一見にしかず、読者のみなさんも是非探してみて下さい。



古川駅付近からの月山


また新白河駅付近から磐梯山を、須賀川市付近から東大巓の右に東吾妻山を、北上駅付近で秋田駒ヶ岳を、新花巻駅付近から和賀岳を短時間望むことができます。意外な場所から意外な山を見付けるのも長距離を走る新幹線車窓展望ならではの楽しみでもあり、面白さでもあると思います。
次に富士山ですが、新幹線から富士山がよく見える時にはいつもどこまで見えるか富士山を追い続けています。条件が良ければ宇都宮駅付近まで、余程の好条件の時に、そしてごくごく希にですが宇都宮駅の北でも望むことができます。これまでで2度だけですが、宇都宮駅からさらに北へ20q近くの大槻第一トンネルのすぐ南から富士山が見えました。富士山まで実に約187qで、東北新幹線から富士山を望める最遠地点と思います。



宇都宮駅すぐ南からの富士山


全体の流れと内容からすれば些細なことなのですが、ちょっとだけ疑問に感じた点もあり御検討いただければとお願い申し上げます。

まずは小山駅付近から谷川岳が見えるとされている点についてです。スケッチで谷川岳と万太郎山とされている山をズームアップした写真を示しますが、見える方向と距離から推定して谷川岳とされているのが安蘇山塊の三境山辺りの山で、万太郎山とされているのが野峰辺りの山ではないかと思います。谷川岳と万太郎山は、山頂の仰角を計算してみますと、これら前山に完全に隠されてしまい小山駅付近からは見ることができないのではないでしょうか。



小山駅付近から太平山の右に見える山


ちなみにオキの耳・トマの耳の谷川本峰は東北新幹線からは見える個所がなく、谷川連峰の仙ノ倉山と平標山が大宮駅のすぐ北あたりから見えることがあるだけです。同じく鬼怒川鉄橋付近からの尾瀬燧ヶ岳も仰角を計算してみますと前山に隠されてしまい、見える可能性はないと思います。


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