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2008. 04. 14
- 16  神崎川・銚子ヶ口 

以前より興味を引かれる記事がいろいろとウェブサイトに出ていたので、是非訪れたいと思っていた愛知川(神崎川)の源流地帯に行く。山蛭が多くなる雨期を避け、水に浸かっても寒くない頃というので、この時期を選んだ。当初は、源流まで遡り、雨乞岳頂上を踏んでから、イブネ・クラシという奥座敷に行き、そこから銚子ヶ口を経て、杠葉尾に戻るという計画にした。それほど甘くなく、予定の半分を歩いたにとどまった。

同行: 単独



2008. 04. 14 永源寺から西行河原

コースタイム

1226 永源寺、1256 永源寺ダム、1500-1503 杠葉尾(ユズリオ)北尾根登山口、1534 風越谷、1601 林道から川原へ、1614 川原幕営

近江八幡、八日市での乗り継ぎは完璧だったが、永源寺では4時間以上も待たねばならない。永源寺を訪れ、ゆっくりと昼食をすればよいと考えていたが、それでも12時半には終わってしまった。あとは時間のつぶしようがない。歩いても2時間少々、バスを1時間50分待ってから20分乗ってもほぼ同じと計算し、歩くことに決める。永源寺ダムあたりの桜が満開で申し分ない散歩となる。



永源寺ダムでは桜が満開


その後は、人家もほとんどない愛知川沿いの道となる。しかし、さすがに近江と伊勢を結ぶ重要な街道だけのことはあり、車は結構通る。杠葉尾の近くになって、やはりバスに追い抜かれた。登山口でカードに記入してから、神崎川に向かう。タムシバがあちこちに咲いており、優しい彩りを添えている。ヤシオツツジも少し。林道からの降り口はすぐに分かった。下りた所は低い堰堤のすぐ下であり、ちょうどテントひとつ分の砂地があったので、そこに泊まることにする。対岸にはハシゴが架かっており、翌日のスタート点がはっきりしたので、一安心である。徒渉も大した問題ではなさそうである。この日の午後から晴れるとの予想であったが、回復の兆しはないままだ。2日目は晴れ、3日目の午後が雨との予想なので、多少うしろにずれ込むとすれば、かえってありがたい。



林道から見下したタムシバ満開のセンコウ谷

2008. 04. 15 西行河原から白滝谷出合

コースタイム

0640 テント場出発、0705-25 地図を紛失して捜索、0756 カラト谷、0900-25 川原で休憩、1006-14 ツメカリ谷、1029 谷が南に屈曲、1155-1205 峠のT字路、1220-1310 天狗滝すぐ上の沢、1315-1405 道探し、1432 峠のT字路、1510-1520 白滝谷を越える、1640 白滝谷出合近辺でテント

7時半ころから5時まで実によく寝た。朝食前に草むらに入って行くと、噂のヒルが寄ってきた。4月なので心配ないかと思っていたが、いる所にはいるのである。対策として消毒用アルコールが有効と書いてあったので、試してみた。いとも簡単に丸まって落ちていった。1滴あれば十分なので、数百ccも持ってきたのがおかしくなった。

沢は靴のまま渡り、ほとんど濡れずに済んだ。右岸の道を行くが、すぐに曖昧になる。川が大きく湾曲しているあたりを、コピーしてきた25000の地図で確かめながら歩いていたが、しばらくして、それを紛失したのに気がつく。今回の地図はかなり重要なので、引き返す。どこを歩いたのかも分からないので、とうとう見つけることができなかった。かなり行動が制約されることになる。道らしい道があるかと思えば、すぐに杣道になり、獣道になり、消えてしまうというのが繰り返される。やがて小さな沢を越える。ロスタイムを除いて、出発からほぼ1時間でカラト谷に達する。さらに1時間歩くと気持ちよい川原にでたので、小休止してオハギを口に入れる。




静けさに満ちた本谷(カラト谷とツメカリ谷の中間)


そこからツメカリ谷までも大変である。道も分かりにくい上、非常に危ない道で、両足だけで歩けるような所はほとんどない。時には膝だけでなく、腹までつけて匍匐前進しなければならない。ルートがはっきりしている穂高のジャンダルムなどよりは困難度は高いのではなかろうか。やがて下に川が見え、急降下して出合に着く。下りの斜面にいくつかのイワウチワが咲いており、愛らしい。高山植物の中で最も好きな花かもしれない。テントからここまで実質 2:40 を要した。ガイドブックには 1:35 とあるので、大幅な遅れである。道を知っている人ならそんな時間で歩けるのであろうか。

そのあとは、大石が転がる川原を歩いたり、邪魔があるときは右岸の川縁を歩いたりしていたが、川が大きく湾曲するあたりで、対岸に瀬戸峠への道を示すテープを見かけた。ここらで左岸に渡っておくべきだったのだが、そのことを失念しており、ずっと右岸を歩き続けたのが間違いとなった。そろそろ白滝谷とぶつかるかなと思っていたが、なかなか出てこない。やがて「前進は×、左が天狗滝方面」という標識が出てきたので、それにしたがってしっかりとした山道を登る。どんどんと登るので、途中でこれではおかしいと一度沢の方に下りはじめたが、やはり先ほどの道は南を目指しており、方向としてはおかしくないので、また舞い戻り、登り続ける。やがて峠のような所に出る。そこに標識があり、「左は羽鳥峰、前方はヒロ沢へ」とある。ヒロ沢の手前にあるはずの白滝谷はどこへ行ったのだろうと狐につままれた気持ちになる。

まあ、目指すのはヒロ沢から水晶谷の方であるので、騙されたようだが下りていく。15分で沢の出合に出る。ここも気持ちのよいところで、2度目の昼食とする。沢の下は滝になっており、そのときは気がつかなかったが、あとで色々と付き合わせると、これが天狗滝だったらしい。GPSで確認するとまだヒロ谷は遠い。食後、歩き始めてすぐに道が途絶える。テープがあちこちに巻き付けてあるにもかかわらず、分からないのである。川へ下りたり、シャクナゲの中をくぐり抜けたりしながら、45分ほどウロウロした末、とうとう諦めることにした。

来た道を帰るのは多少楽かなと思ったが、道がないも同然なので、一筋縄では行かない。例の峠を通り過ぎた後、今度は間違いなく白滝谷を渡る。出合よりかなり上流部である。よじ登ったり、よじ降りたりの繰り返しである。普段は藪こぎをあまりいとわないのだが、さすがにうんざりした。小さな沢を越えるのに苦労するのである。やっとテントが張れそうな川原に下りたが、もう一度だけ高巻きして、もう少し下流の川原まで下る。16:40にやっとねぐらを決める。フトみると対岸に杠葉尾へという標識が見えた。その日の中に渡っておけば、多少濡れてもゆっくり乾かせると思ったが、テントを張るのはこちらの方が快適そうなので、苦労は明朝に持ち越すこととして、右岸にとどまる。水音は昨夜より穏やかである。夜目を覚まして外を見ると、白鳥座がわずかに見えており、明日もそれほど悪くないなと安心する。またもや5:30まで寝てしまう。


 

白滝谷出合付近の神崎川



2008. 04. 16 白滝谷出合から銚子ヶ口

コースタイム

0715 テント場出発、0810 対岸から再出発、0828 ジュルミチ谷出合、0852 本谷から離れて登る、0911-35 林道、959 尾根、1101 P871、1140-50 休憩、1226-1325 銚子ヶ口東峰、1329 三角点峰(1077)、1340-1355 中峰、1415 東峰出発、1451 深谷川への分岐、1602 登山口、1635 杠葉尾BS

前日の夕方に目星をつけておいた場所に行ってみるが、なかなか流れが早く、部分的に結構深いので、決めかねてしまう。ウロウロしたあと、やっと何とかなりそうな所を見つけ、パンツ一枚になって、靴だけを履いて、まずは空身で往復してみる。結果的には思ったより楽で、膝上程度まで濡れただけだった。そこからは、左岸を下流に向かって、少し登ったり、川縁まで下ったりしながら、川に並行する道がしっかりとついている。やがてジュルミチ谷になり、「銚子ヶ口へ」と書いてある。ちょっと魅力的だったが、地図がないので、無理はしないことにする。

その後、小沢の所で最終的に神崎川と別れる。すぐに林道と出会う。いつものことながら、立派な舗装道路である。材木を満載したトラックが走っている林道をこれまで見たことがない。少し腹ごしらえをしてから、瀬戸峠を目指して登る。ここは大勢の人が歩いているはずなだが、すぐに道が分からなくなる。かなり注意したが分からないので、広い沢を登り、さらに3本に分かれている沢の一つをよじ登る。尾根に出てもなにもない。左手に進むと、もう少ししっかりとした北東から南西に延びる尾根に出る。銚子ヶ口はまさに南西の方向なので、その尾根を辿ればよいのだろうと見当をつける。多分北東に行けば瀬戸峠にでるのであろう。

ここも道はないが、歩きやすい尾根である。しばらくすると前方に銚子ヶ口らしい山が見え、実に遠くに感じられる。やがて、境界を示す黄色いポストが出てくるようになり、人が歩いた気配もみられるようになる。そのうち、登山者が残したテープも見つかり、少なくとも誰かは歩いているなと安心する。空が開けるたびに、GPSを使って居場所を確認する。3番目のピークを越えてから見上げる前方の山は実に急で、45°もあるのではないかと思うくらいである。実際、大変な登りであった。




尾根の途中からみた銚子ヶ口


道はなくても、狭い尾根なので悩むことはない。しかし、シャクナゲの枝がザックに引っかかるのが煩わしい。いい加減うんざりしてきた所に、あめ玉の皮が落ちており、やはり、誰かもここらで休みたくなったのだなとおかしくなる。はたして、すぐ上に狭いが腰を下ろせる岩場があった。一休みする。雲行きがあやしくなり、いつパラパラと来てもおかしくない雰囲気である。そのあとは、比較的楽になり、右手に大きなガレ場を見ながら進む。やがて森林限界を超えて高山の雰囲気が出てきたなと思うと、まもなく銚子ヶ口東峰だった。実に気持ちのよい所である。それほどの展望はないが、それでもイブネ、クラシという今回の主目的が遠くに見えている。雨乞岳も雲の間から少し見える。幸い薄日がさしてきて、ますます安らかな気持ちになる。ゆっくりと腰を落ち着け、まずは靴下を脱いで乾かす。食べられるものを次々と片付ける。長い茎にとげをいっぱいつけたヒカゲノカヅラが地面を這っている。


食事が終わり、すぐ隣の三角点峰に行く。ここから北尾根があるのかなと思っていたが、なにもない。南西にあるピークを目指してもう少し進んでみる。ついた所に中峰という新しい標識があった。右は佐目峠と書いてあり、左はかすれていて読み取れない。概してこの山の標識は役に立たないものが多かった。もう一度、ゆっくり考えるが、地図がないのがつらい。ただ、ここからの見通しは東峰に比べて少しよくなっており、雨乞山の頂上までなんとか見ることができた。




中峰からイブネ・クラシと雨乞岳

杠葉尾に下りる道はメインの登山道であり、案内は必ずあるはずと、もう一度三角点に戻る。なにもない。東峰から、先ほど苦労した道を戻るしかないのかとゾッとしながら、東峰でもう一度標識を探す。ここにも板切れは6-7枚転がっているが、役に立つものはない。覚悟を決めて下りはじめる。すぐに右手に先ほどのガレ場が見え、登ってきた道でなく、その西側の尾根を下りていることが分かった。登り着いたときに、すぐ確認しておけばすぐ分かったはずなのであるが、周りを見るのに気を取られてしまったのが、失敗だった。

下りはじめて数分すると、「八風街道の登山口へ」という標識が出てきた。山頂に置いてくれればよいのにと思う。その標識で左折し、沢沿いの道に入っていく。北尾根というのにそぐわないなと思ったが、最後まであまり尾根らしい道とは言えなかった。下山するまでの2時間弱は、今回初めて、何の心配もなく歩くことができた。途中で、もう一度イワウチワが沢山咲いているところを通った。今回は、イワウチワ、ショウジョウバカマ、タムシバが主役だった。とうとう、3日間とも誰にも会わなかった。

杠葉尾のバス停を確認し、近くに酒屋があるというので、ビールを買いに行き、余りものでつまみを作って、バスが来るまでの1時間半ほどを過ごす。バスは結構な下り坂を下っていく。登って来た時はほとんど平坦な道のように思っていたが、調べてみると100bほどの高低差があった。

いずれにせよ、思いのほか手強い山域であった。初めての訪問で隅から隅まで歩こうというのが、無茶だったようである。
同じ道はこりごりなので、別のアプローチでイブネ・クラシを歩きたいものである。


  
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