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2008. 2. 24-25
  北八ヶ岳

23日の同窓会、26日の仕事の間を縫って、3泊2日で、行ったことのない北八ヶ岳を歩く。冬山の初級者用とあったが、まさにそうであり、ここで遭難する可能性は低いかもしれない。登山道にいる限りはトレースがはっきりしており、数時間毎に営業中の小屋があり、雪崩も滑落もない。


同行: 単独



2008.2.24 中山峠から麦草ヒュッテ

コースタイム

635 茅野発、732-745 渋ノ湯、 842-844 八方台分岐、959-1003 黒百合ヒュッテ、1010-1035 中山峠、1100 中山(2496)、1145-1212 高見石小屋、1230 丸山(2330)、1310-1345 麦草ヒュッテ、1416 白駒池、1500 麦草ヒュッテ

同窓会の二次会を失礼して、2000発のあずさに乗って茅野に向かったが、二ッ玉低気圧の強風のため少し遅れた。宿では、宅急便で送っておいたザックの詰め替えに手間取って、寝たのが遅くなった。あまり熟睡しないうちに5時間ほどの睡眠で出発ということになった。泊まった「ちの旅館」は、コストパーフォーマンスが大変よい。

曇り空での、バスの途中からの景色は特記することもない。毎週来ているような男性、若い男女の計3人が同じバスで山に向かった。バスを降りて、先に橋のそばの登山者カードの所に行き、かなり深い雪なのでワカンをつけていると、単独行が「つぼ足で行ってみる」と先行して出発した。あとの二人が、やはりワカンをつけようと相談している間にこちらも出発する。先行者の踏みあとがあっても、やはりワカンがある方が歩きやすい。雪は結構深いが、ルートをはずしさえしなければ、しっかりと固まっていてなんの問題もない。気持ちのよい深い森林地帯を徐々に高度を上げていく。いくつかの分岐を過ぎて行くと、時々雪煙の中にかすかに稜線が見えることもあるが、ほとんど何も見えないも同然。黒百合から下りてきたグループとすれ違う。前日は30cm位のラッセルで大変だったと話しておられた。





唐沢温泉との分岐点



樹林帯を抜けて黒百合平につくと、かなりの人が小屋周りにいる。風が強烈で、2張り張ってあったテントの1つは入口が開いて、今にも吹き飛ぶのではないかと思うほど揺れていた。小屋の入口の温度計を見ると−16℃であった。風を考えると体感温度は優に−30℃以下であろう。中に入って食事をすれば良かったのだが、頼まれてカメラのシャッターを押しただけで、中山峠に向かった。





風に飛ばされそうな黒百合平のテント



手袋をはずすだけで、あっという間に指先がしびれてくる。手袋を3重にしたが、はめるのが一苦労で、歯を使って引き上げる。峠に着いて、やはりなにかを食べておいた方がよいことに気づき、少し風陰を見つけて腰を下ろす。それまで、Tシャツの上からゴアの雨具をつけていただけなので、足を止めると、なにかを着なければ耐えられない。両者の間に長袖のシャツを追加する。指先が凍えて、シャツのボタンをなかなかはめることができない。テルモスの紅茶を少しこぼすとアッという間に氷になっている。このあと、中山を越えて高見石に着くまで、カメラを出したり、メモを取ったりすることはできなかった。

高見石に近づくと少し余裕が出てきたので、電池が駄目にならないようにカメラを腹の所に差し込むようにして歩く。高見石に着き、デッキのベンチに腰を下ろさせて貰う。風の影になったのか、あっという間に春の気分になる。お茶を飲み、小屋の様子でも写真に撮っておこうとカメラを探すがない。落としてきたらしい。小屋の人は親切で、住所、電話を置いていけば、届けがあったときに連絡してあげると言ってくれる。住所を書いて渡しながら、思い出していると、ここからそれほど遠い所ではないはずと気づき、探してみることにする。目標の麦草ヒュッテまでの時間を聞くと、カメラ探しに1-2時間使っても何の問題もない。ザックを置いて、探しに戻ると3-4分で見つかった。スノーシューのツアーに来ていたグループが渋ノ湯に下りるのと同時に丸山の方へ出発する。予想通り、天候もだんだん落ち着いてきている。丸山頂上では、ぼんやりと見えてきた茶臼山方面をカメラに収めることもできた。





丸山から茶臼山



麦草ヒュッテに近づくと、広々とした平原になっており、猛烈な風が吹いている。トレースは全くわからないが、必要最小限の赤旗が立っているので、視界がなくても迷うことはないだろう。潜らないようにと、見えない山道を足で探りながら歩く。目印に導かれて、小屋に到着する。

若い従業員が笑顔で迎えてくれ、すぐに熱いお茶を持ってきてくれる。ストーブに薪がくべられ、熱いお湯が沸いているのを見るだけで豊かな気持ちになる。夕食用の米を研いでおいてから、白駒池まで散歩に出かける。

相変わらず平原では風が強いが、森林に入ると穏やかになる。時々日が射しはじめている。ヤツガダケトウヒという固有種があるというので、少し下調べをしてきたが、区別は簡単ではない。シラビソ(シラベ)とオオシラビソ(アオモリトドマツ)の区別さえできないままに終わった。それらと、トウヒ、モミの区別だけはできたかもしれない。途中で、やはり散歩途中らしい若者とすれ違う。白駒池は単に雪が覆っているだけで、それほどの見ものではなかったが、帰りに森林から開けた所に出たときに、尾根の上に頭を覗かせている茶臼山と縞枯山が見えたのは嬉しかった。そのときはもう青空さえ見え、雪は日光を反射させて輝いていた。






白駒池から帰る途中で見えた茶臼岳、縞枯山



ヒュッテに戻ると、今晩の宿泊は二人だけなので、大部屋の予約だが、個室での相部屋でどうぞという。部屋に入ると先ほどの人であった。コタツもあり、石油ストーブもある。食事まで色々と話をする。この日は、レトルトのカレーに、持って行った生卵、その他を入れて多少豊かにする。食後には、素泊まりなのにコーヒーまでサービスしてくれる。相客はかなりテレビを見ていたようであるが、眠いので早めに寝て、十分に睡眠不足を解消した。



2008.2.25 麦草ヒュッテから北横岳

コースタイム

640 麦草ヒュッテ、655 大石峠、710-717 中小場、752-805 茶臼山(2384)、828-845 展望台、900 縞枯山(2403)、912 雨池峠、920 縞枯山荘、1000 三ッ岳分岐、1018 北横岳南峰(2473)、1025-1135 北横岳北峰(2480)、1210-1214 ロープウェイ山頂駅、1250 五辻、1335 ロープウェイ山頂駅、1423-1500 ロープウェイ山麓駅、1555 茅野駅

5時頃に眼をさまし、外を見ると星が出ている。気温は−16℃である。朝の支度をしていると、だんだんと東の空が赤くなってくる。明るくなってしばらくして出発する。大石峠ではまだ夜明けにはなっていなかったが、中小場に近づくと日が射し始め、上を仰ぐと、空が深い青色に染まっている。早稲田の「紺碧の空」を口ずさみながら登る。

中小場では大展望が待っていた。振り返ると丸山、中山の向こうにはじめてくっきりと両天狗岳が見えた。その右手は峰の松目らしい。丸山からのびる尾根の向こうには、北岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈岳が真っ白に輝いている。中央アルプスもそれぞれのピークが同定できる。御嶽は左半分だけ見えている。行く手の茶臼山と縞枯山もすぐそばである。茶臼山の山頂の標識の所では展望がないが、少し奥にはいるとすばらしい光景が広がる。北八ヶ岳の横岳、赤岳、中岳、阿弥陀、権現、編笠が勢揃いしており、その右に鳳凰三山、北・駒・仙丈、中央アルプス、御嶽と続く。ここでは中アと御嶽にガスがかかり始めていた。眺めていると相部屋の人が追いついてきた。

次の展望台は縞枯山の手前にある。ここではじめて北横岳方面を見ることができた。南八ヶ岳、南ア、中アは相変わらず冴えわたっている。御嶽、乗鞍は頭だけ、奥秩父方面やその左手は依然として雲の中である。ここで、時間調整のためもあり、腰を下ろし、南方面の景色を見ながら、行動食を口に入れる。





縞枯山展望台から南八ヶ岳、茶臼岳、南アルプス



縞枯山の山頂ははっきりしなかったが、長細い頂稜になっている。直角に右折して下ると、雨池山のこんもりとした山容が正面に見え、すぐに雨池峠、縞枯山荘、坪庭入口となる。ここは、溶岩台地とのことであるが、すべては雪に埋もれている。視界が悪いと迷いやすい地形であるが、赤旗が頻繁に立っているのでその心配はない。北横への登り道を整備している小屋の人がいた。余り必要性を感じなかったが、ご苦労さまである。三ッ岳への道は全く踏まれていない。

北横の頂上付近は少しクラストしていたので、つぼ足では少しきついかもしれない。北横の南峰につく。蓼科山が目に飛び込む。その左には穂高・槍連峰が、右にも少しだけ北アの北部が見えている。南アでは、最も左側に千頭星山が見えているとガイドブックが教えている。甲斐駒の左右には悪沢と塩見が見えるらしいが、大変難しい。南八の左は相変わらずすっきりしない。北峰に移動してしばらくは、一人だけであったが、先ほど、縞枯で休んでいる間に先行した同宿者もやってきた。そのうち入れ替わり立ち替わり、ロープウェイで上がってきた人がやってきた。展望がよいので、またここで腰を落ち着け、バーナーを取り出して昼食とする。

見える範囲は刻々と変化していく。中アは南峰の影で見えない。初めは北アの北部は鹿島槍だけがなんとか判別できたが、そのうち白馬三山から鹿島槍までの全貌が見えてきたりする。乗鞍・霞沢・穂高・槍もはっきり見えたり、雲に隠れたりしている。しかし、爺岳だけは一度も見えなかった。30分ほどすると、奥秩父の方向もやっと見え始めた。赤城方面がぼんやりと、そして両神山、御座山、三宝山、甲武信岳、国師岳、金峰山が指摘できる。御正体山もかすかに。久しぶりに昼食と休憩に1時間以上もかけた。もっといれば、妙高、浅間なども見えるかもしれないという未練を抱きつつ、引き返すことにする。





北横岳から車山、鉢伏山、蓼科山を前景に北アルプス



ピラタスのロープウェイ駅で、バスの時間を確認したあと、余りそうな時間で五辻まで歩くことにする。途中でなかなかよい景色の所もあり、まあ値打ちがあった。帰りの樹林帯で、もう一度ゆっくりと木の名前を調べながら歩く。同じ季節のオオシラビソも蔵王ならば樹氷が成長しているだろうに、ここでは雪が少なく、湿っていないためか、全然成長する気配がない。スキーコースの下りに1.5時間ほどと聞いていたのを思い出し、途中から急ぎ足で駅まで戻る。1時間25分あったので、問題なかろうと一安心する。実際には50分もかからなかった。

途中からは、邪魔していた雲もすっかりと消えた。南ア、中ア、北アや、手前の霧ヶ峰・鉢伏山・三峰山なども、ゆっくりと見ることができたので、やはり歩いてよかった。南八ヶ岳の方は、全体が見えないで、各ピークの頭だけなのが意外だった。スキー場はガラガラの状態だった。バス停についてがら、濡れたものを乾し、ビールを買ってきて飲みながらパッキングをしていると、ちょうど発車時間となった。予定より一台早めのバスになってしまった。


バスの運転手にこのあたりに観光スポットはないのかと聞いたが、今の季節は何もないという。茅野についてから、観光案内所で展望の良い場所を聞くと、市役所がよいと紹介してくれる。早速、日本で最も標高の高い市役所(801 m)の8階のロビーに上がる。推薦されただけあって、すばらしい八ヶ岳の眺めである。阿弥陀岳と赤岳の両方が見えるような解説になっていたので、観光課に顔を出し、真偽を確かめる。課長さん的な人が出てきて、もう一度8階まで一緒に上がって説明してやるという。大変よく知っている人だったが、赤岳については言葉を濁していた。帰ってから計算をしてみた。阿弥陀の頂上は間違いなく、赤岳の頂上より高く見える。しかし、赤岳の頂上と結ぶ線は阿弥陀の2780mあたりを通る。その肩と赤岳の頂上はほぼ同じ仰角になる。したがって、ほぼ見えていないと言って良いだろう。もちろん。中央線の茅野駅近辺からは見えない。説明板にあった富士山が見えなかったと言うと、場所を少し移動すると見えると教えてくれた。説明板の所から見えないのは、途中の丘のカラマツが毎年かなりの速度で生長してしまったため、設置したときと現在では眺めが違ってきているためという。

今回は雪も深く、ワカンだけで正解であったが、小屋の主人の「もう少し暖かくなり、一旦融けたあとでまた固まると、アイゼンが必要になる」という説明は説得力があった。一応持って行くのが正解だろう。





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