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2006. 5. 22 針ノ木岳


連休の混雑が終わってから、冷池冬季避難小屋に泊り、2泊3日で鹿島槍に登る予定を立てた。連休後好天がなく、延び延びになっていたが、やっと落ち着いたので冷池管理者に電話してみた。冬は避難小屋として使えるが、今の時期は駄目ですというちょっと理解しにくい返答だった。やむを得ず、針ノ木岳への日帰り登山に変更。大沢小屋に泊まろうと電話すると、ネットには5月から営業とあるのに、やはりやっていないとの返事。扇沢駅下のロッジ泊となる。荷物が少なくなったのはよいが、一泊でとんぼ返りというのは、少しもったい。

同行: 単独

 

コースタイム

643 扇沢ロッジ、651 登山口、733 大沢小屋、849-903 2133 m地点、920 マヤクボ沢出合、1005-1015 2450 m地点、1033-1125 針ノ木峠、1255-1318 針ノ木岳(2821)、1420-1445 マヤクボ沢出合、1530 大沢小屋、1548-1558 林道出合、1615 扇沢駅

前日、大町に早めに着いて山岳博物館に立ち寄る。展示品もそれなりに興味があったが、一番の目玉は前庭からの展望である。常念、(有明)、大天井、(清水)、北燕、餓鬼、餓鬼コブ、唐沢(鍬ノ峰)、烏帽子、南沢、七倉(鳩峰)、北葛、蓮華(1951 m峰)、赤沢、鳴沢、岩小屋沢、(白沢天狗)、爺、鹿島、(小熊)、五龍、白岳、唐松、大遠見、鑓、杓子、白馬などが見えていたことを、撮影した写真をもとに確認した。あとで知ったのだがhttp://kei-zu.com/main/sangaku/sangaku.htmlに丁寧な同定があった。自分で時間をかけて同定したのが馬鹿馬鹿しくなった。

時間が余ったので、予定より1時間前のバスに乗り、扇沢で登山道を確認しておくことにした。夏道と冬道があり、若干ややこしそうなことがインターネットに書いてあったからである。1600 m付近まで歩いて、大体の感じをつかむことができた。50分ほどの散歩後、扇沢ロッジにチェックインする。

当日、食堂が朝6:00から準備をしてくれるというので、5:30にアラームを設定しておいたが、ちゃんとセットされておらず、寝過ごしてしまう。それでもまあまあの時間に出発できた。勝手の分かっている道を歩き始め、橋の所で右岸に移るが、橋はほとんど雪に埋もれていた。そこからは、ずっと雪の上を歩くことになる。大沢小屋が見える辺りで、水音も聞こえなくなると、小鳥のさえずりが耳に入ってくるようになる。大沢小屋は遠くからは見えるが、近づくと見えなくなる。上を行く人の姿を捕らえる。うんと前方に点のようにしか見えないが2人ほどおり、その少し上にスキーを持っている2人がいる。




左端に針木岳。針ノ木雪渓を行く豆粒のような4人

なかなか距離が縮まらなかったが、2人連れがスキー装着のため立ち止まっていた2133 m地点でやっと追いついた。腰掛けるのに適当な岳樺の倒木があったので、こちらも腰を下ろし、どうせこれから雪ばかりだろうからとアイゼンを着ける。アイゼンを着けている足跡は一切なかったし、着ける必要も感じなかったが、荷物が軽くなるので着けた。しかし、それで正解であった。34年ぶりの北アルプスなので、感触がつかめず、念のためワカンも持ってきたが、これは要らなかった(頂上近くの急斜面ではアイゼンの方がはっきりベター;それ以外ではワカンでも問題ない)。

マヤクボ沢出合を通り過ぎて、しばらく行ったところで、点に見えていたスキーヤーに追いついて少ししゃべっていると、峠から空身のスキーヤーが滑ってくる。「この時期にスキー無しとはもったいないですな」と言われる。その通りであるが、下手なので怪我でもしたら馬鹿らしい。二人はスキーをかついで、つぼ足で上がっていった。少しして追いかけると、峠まではすぐであった。昼食に丁度よい時間であったが、少し疲れたのであろうか、喉に通らない。無理矢理押し込んだが、少し戻してしまう。あとで考えると高山病の類だったのかもしれない。展望を楽しみながら、ゆっくりと休憩することにする。槍ヶ岳から白馬岳までまずまず全部が見えるのであるが、薄い霧がかかっており、透明度は悪い。北アルプス以外は全く見えない。




雪渓の途中から岩小屋沢岳と鳴沢岳



イワツバメが多数飛び交っている。空腹感もないので、ほとんど食べずに頂上を目指す。元気になったと思っていたが、結果的には峠から頂上まで一時間半かかったので、かなりの遅いペースだった。頂上直下の急斜面は、足跡が100段強の階段状についており、アイゼンさえ着けておれば、言われているような緊張感はない。頂上に着いてやっと立山方面の景色が広がる。薄いベールがかかった状態は同じで、剣岳との久しぶりの対面も感激がない。しかし、360°のパノラマが見ることができただけでもよしとせねばなるまい。北アルプスのほぼ中央で全体を見るのに絶好の場所と言えよう。すぐ下で、一羽の雷鳥が餌をついばんでいた。もう周りには人影はまったくない。



針ノ木岳の頂上へ


針ノ木岳の頂上から立山・剣岳


最終バスまでの11時間の持ち時間のうち、6時間半が経過した。そろそろ下る時間である。本当は、スバリ岳まで行ったあと、中間のコルに戻り、そこからマヤクボ沢を下りればよかったのだが、なんとなく意気もあがらなかったので、前進するのはやめて、針ノ木岳東南のコルまで引き返し、そこからマヤクボ沢に下りることにした。グリセードができそうな傾斜であるが、意気が上がらないまま、アイゼンで歩いて下りる。途中からは尻セードが最適になるが、ズボンを濡らすのも嫌なのでやはり歩き続ける。中間にある島を避けないで、そのまま島に上がり、しばらくだけハイマツ、シャクナゲ、コケモモの藪を歩き、再度雪面にでる。




マヤクボ沢途中から鹿島槍と爺岳

針ノ木雪渓と合流したところのデブリで休む。時間はたっぷりある。少しおやつを食べながら、午後のゆったりとした春山の雰囲気を楽しむ。針ノ木峠から2人のスキーヤーが下りてきて、通りすぎていった。「こんなに気持ちのよい所を、アッという間に滑り下りてしまうのはもったいないですな」と言いたくなった。林道にでるまでアイゼンを着けたまま。やはりその方が歩きやすかった。取り損なった昼食を扇沢駅でと思っていたが、レストランは終了しており、缶ビールを買って喉を潤しただけで、最終バスの一台前に乗る。大町駅で汽車の時刻を調べると、よい連絡はなく、仕方なく駅前の食堂に入り、食事とコーヒーで1時間以上の時間をつぶす。

今回は鹿島槍に行くつもりだったので、爺の北尾根ルートで迷わないように、GPSで初めて真剣に準備した。針ノ木なら必要なかったのであるが、折角だから使ってみた。地図はちゃんと入っているし、視界が開けたところだったので、衛星に見放されることは一度もなかった。位置や高度を完全に把握できるので、やはり便利だった。



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